夢のふくびきや｜リアクション

夢のふくびきや

ふくびき・ホラー体験型　伊藤佳奈　入江みつび

　偶然ふくびきやの前で出会った伊藤佳奈と入江みつび。店主に進められるまま、ふくびきを引くことになったのだが。
「うーん、でも」
「面白そうだから、ほらっ」
　二人で一緒にガラガラを回すと……。

　伊藤佳奈、入江みつびは気づけば鬱蒼とし茂る森の中に立っていた。そして、目の前には岩に刺さった一本の刀。
　佳奈とみつびお互いに顔を見合わせた。
「なにこれ、なんとかカリバーとかいうやつ？」
「これを抜けばアーサー王みたいに王様になるのかな？」
「そうだねーって、あきらかに怪しいこんなものを？」
　みつびは、チャレンジャーだなーとか思いつつ、
「いいよ、抜いちゃえ抜いちゃえ」
　全力で煽ってみる。
「親知らずと岩に刺さってる刀はとりあえず抜いとけってちくわ大明神さまが言ってた気がするよ！」
　佳奈は力強く頷いて、刀の柄をしっかりと握り、ゆっくりと抜いてみる。
　手応えは重い。しかし、思いの外あっさりと抜くことが出来た。佳奈は片手で刀を立てて、空へかざす。
「これは……中々の業物」
　と、その時。木々の隙間から見える空に暗雲立ち込め、派手なスモークと共に大蛇や大蜘蛛、巨大ミミズが現れた。
「わわ！？　にょろにょろ～！」
　佳奈は大声を上げて、みつびの背中に隠れた。
　それらは体長二メートルはあるだろうか、爬虫類特有の鋭い眼光が二人を見つめている。
「どわー出たねー。あらら、蛇とミミズがわんさかだー」
「怖い～。無理無理無理～」
「あれ、佳奈ちゃんこういうの苦手なの？　あらあらかわいいなー女のコしちゃってー。でも、肩を鷲づかみにして爪立てるのはやめてほしいなー？」
「そんなこと言ってる場合じゃっ、逃げようよっ」
　ようやく二人が駆け出すと、
「追ってくる！？」
　紐のような長い体をくねらせ、迫ってきていた。
「ぎゃーっ、やめて、蛇の蒲焼きなんか食べられない～」
「佳奈ちゃん、ちょっと落ち着こうよー。食べる予定ないからね？　　それより、その刀」
　すると佳奈は、はっとしたようで、
「そっか。ここは戦うしかないよね」
　体の向きを変えて、刀を構える。
「みづひさん、下がって」
　しかし、時々木々に絡まりながら迫ってくる、にょろにょろ系の巨大生物達の動きに血の気が引いた。
「やっぱり無理～」
　立ち止まっていたら追いつかれる。二人は再び駆け出した。
「佳奈ちゃん、ここはみつびお姉さんにまかせなさい」
「み、みづひさん、何か策が？」
　みつびは釣りをする。ウツボもうなぎもそれに似たミミズもへっちゃらだ。
　みつびはかまぼこの形をしたピンに触れた。
「かまぼこキックで、みーんな遠くへ飛ばしてあげ……」
「どどどっどうしたの？」
「ギャー！」
「キャー！？　みづひさん！？」
「蜘蛛もいるー、しかも足長い系！！　蜘蛛はいやーっ、蜘蛛の丸焼きなんて食べたくないー！」
　もはや二人ともパニックである。ひたすら逃げる。
「はぁ、はぁっ、どうしたら？　あ、これはやっぱりもう一度刀を岩に刺して封印するしかないかな！？」
「何、刀差し直すの！？」
　どうにかして岩があった場所へ戻ることになった。
　と、その時である。目の前、太い木の幹の陰から巨大な大蛇と蜘蛛が現れたのだ。
「どぎゃー！！！」
　佳奈とみづひの叫び声がシンクロして森に響き渡る。
「無理だって！　無理無理無理～」
　佳奈は涙目になりながら、刀を両手で握る。
「にゃーっ」
　対してみづひは地面を蹴った。
「ええっい！」
「どりゃー！」
　佳奈は刀で大蛇の首をすっぱり落とし、みづひは空中で見事な回し蹴りを炸裂させ、蜘蛛を横へ吹っ飛ばした。
　いわゆる火事場の馬鹿力が発動したらしい。
「はっ、はあっ」
「や、やった！？」
　撃破した巨大生物の横をすり抜けて、走りながら後ろを振り返ると、
「ひぃっ」
　佳奈が喉の奥から声を漏らした。大蛇や蜘蛛の体から真っ白な靄が抜け出し、それぞれの形へと変化した。
　どう見ても、蛇と蜘蛛の幽霊である。
「飛んでくるー！？」
「だーれか、たすけてー」
　と、横を見ると、遠くに例の岩が見えた。
「佳奈ちゃん、あれ」
　指を差すと佳奈も気づいたようだ。
「あっ、あそこにこの刀を、ひあっ！？」
　よそ見をしていたせいで、佳奈が盛大に転んでしまった。
「佳奈ちゃんっ」
　気づいたみづひが戻ってくる。
「しっかり！」
　佳奈を助け起こした。
「あ、ありがとう」
　膝を擦りむいて血だらけ、怪我をした佳奈に背中を向けるみづひ。
「乗ってっ」
「へ？」
　みづひは強引に佳奈の体を引き寄せ、背中に背負った。
「今なら、佳奈ちゃんを背負って走れる気がするっ！」
　追いかけてくる幽霊と巨大生物から逃げつつ、遠くに見える岩めがけて全力失踪を始めた。
「あそこに刺すよ！　それで消えると思う」
「封印的なのね。おっけ信じるよ」
　迫る巨大生物達。
　佳奈は刀の柄を逆手に握った。
「佳奈ちゃん、行けー！」
　やり投げの要領で、佳奈が思いっきり投てき。
　刀は真っ直ぐに飛んで行き、岩に突き刺さったのだった。

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シナリオ

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