薔薇色の休日｜リアクション

薔薇色の休日

【遊びは道連れ見切り発車】

　シグレ達が薔薇園に入った頃。

　星ヶ丘駅には霧谷朧の姿があった。
「んー、ホント良い天気なんよ……」
　改札を抜け、ぐーっと伸びをしながら雲ひとつない青空を仰ぎ見てからふぅっと大きく息を吐く。
　放課後や休みの日は子供達の遊び相手になることの多い朧だったが、今日はそういった予定もなく。
　かといって今日の空は家で腐るには勿体なさ過ぎた。
　そうしてあてもなく、普段あまり来ることのない星ヶ丘に足を運んだのだった。
「星ヶ丘住みの知り合いって誰かいたっけかな……ん？」
　朧が丁度辺りを見渡した時、駅前に止ったバスに乗り込む人々の列の中に松葉杖をついた同じ高校の同級生、美崎岬の姿を見つけた。
「あら？朧ちゃんじゃない！」
　朧が声をかけるより早く岬の方が朧に気付き、明るい笑顔を浮かべて手を振ってくる。
「美崎さん。バスに乗ってどこに行くんさ？」
　朧が駆け寄って問えば、岬は悪戯っぽくウインクして答える。
「うふふ、星ヶ丘寮の近くにある薔薇園よ！ねこったーで不思議なバラの噂を見てからずっと気になってたの。朧ちゃんは？」
「俺は今日、暇人なんよ～」
「あらっ、じゃあ一緒に薔薇園に行きましょうよ！きっと素敵なものが見れるわ」
　特に予定もない朧にその誘いを断る理由はない。
　結果、2人連れ立って薔薇園行きのバスに乗り込むことになった。
（たまにはこういうのもいいさね……）
　バスに揺られながら隣に座る岬のお喋りに耳を傾け、朧は今日という1日がどんなものになるか少しわくわくしていた。