【星幽塔】第一階層　コボルトの真実｜リアクション

【星幽塔】第一階層　コボルトの真実

【ＶＳベビードラゴン&コボルトシャーマン戦】

　部屋に入った瞬間が一番危険だと、その予感に従って正解だった。
　円はとっさに壁に張り付くとその黒い閃光をよける。
「あっぶな」
　コボルトシャーマンの放った「黒の星の力」だ。
　強力な呪いであり、当たったらどうなるかはわからない。
「スキありだ！」
　部屋の中に刀が侵入する。
　ろっこん【加速】を使い、コボルトシャーマンに接近する。
　が、杖が蛇のようにしなり、そのまま刀を打ち据える。
「はっ！」
　そのまま刀は持っていた日本刀を上段にはね上げる。
　コボルトシャーマンは持っていた杖をはじかれ歯噛みする。
　そのコボルトシャーマンと連携するように繰り出された翼による強打が刀にクリーンヒットした。
　小さくてもドラゴン、色は黒。
　部屋の中をその小柄な体躯を活かして疾走しそのまま勢いを利用した攻撃だ。
　そしてその反対側から部屋に潜んでいたコボルトが刀に襲い掛かる。
「させないよ！」
　コボルトに向かって急接近し、炎のアッパーカットを食らわせる円。
「ガントレットに炎の噴射を付けた速度で実質10倍に見える！」
　まさに魔法と拳法の融合のようにみえるが喧嘩殺法である。
　火炎推進拳は、寝子島書房によると、明の時代に始原の火砲を見た陳周泰が開発したのが最初らしい。
　閑話休題。
「虎の子メリィ、負けるものかー！！」
　いくぞーと気合の入った声が部屋に侵入してきた。
「見敵必殺（サーチアンドデストロイ）！　見敵必殺（サーチアンドデストロイ）なのです！」
　メリィとリリエルが部屋Ｅに到着したようだ。
　そして、コボルトシャーマンの後ろに転移してきたサキリが首を取ろうとする。
　しかし、冷静にシャーマンは目標を見定めその場をかわし、ベビードラゴンの背後に回る。
「ちょこまかと！」
　次に部屋に入ってきたのはティオレだ。
　しかし、ティオレははっと気づいたように部屋から出る。
　そして、円も同じことに気付いて同時に叫んだ。
「「ブレスがくるわ（ぞ）！」」
　次の瞬間、ドラゴンのブレスが部屋の中にさく裂した。
　黒のブレスは浴びた全員の生命力を等しく奪う。
「風の力で相殺してやるですよ！」
　リリエルがそのブレスに向けて風の力を放つ。
　二つの力が激突し、部屋の中にすさまじい星のエネルギーの奔流が生まれる。
「きゃぁ！」
「キュィィ？」
　その爆発に体が軽いドラゴンやリリエルまでも吹き飛ばされる。
　ブレスは天井に激突し、周囲に岩が落下する。
ティオレを除いた部屋の中の面々はこれに対処しなければいけなくなった。
「危険なやつにはオシオキだー！！」
　そこから立ち直ったメリィが獣の力を活かし岩の間をすり抜けながらドラゴンを殴りつける。
　が……。
「いったぁい！」
　ベビーとはいえドラゴン。うろこが固く、ただ殴っただけではダメそうだ。
　星の力を使って二回目の攻撃をあてた時、若干削れたように見える。
「星の力を使って！」
　それに気づいてすかさず周囲に伝える。
　だが、同時にその動きはコボルトシャーマンに余裕を与える。
　呪いの力がそのままメリィにヒットし、メリィはそのまま動かなくなった。
「ちっ」
　ティオレがすかさず部屋に入りこみ、メリィとシャーマンの間に割って入る。
「くそ、ちょこまかと」
　一方、刀は飛び回るドラゴンに苦戦し、円はリリエルを助け起こしていた。
　苦戦、一言で言えばそうだ。
　こうして時間だけが過ぎていく。