ねこじま魔法少女大戦３（ドライ）～聖なるコケシ攻防戦～｜リアクション

ねこじま魔法少女大戦３（ドライ）～聖なるコケシ攻防戦～

【魔法少女は電動の御神体の夢を見るか？】

　闇の中をひとりの少女が駆ける。
　ここは御神体『聖なるコケシ』が安置されている神殿『ネコジマ・テンプル』内部。
　魔法少女たちの聖域は今、邪悪なニンジャたちに蹂躙されイクサバと化していた。
「はぁ……はぁ……！　ひ……ひどい目に遭ったわ」
　黒いゴシックロリータ風の戦闘服に身を包む黒き魔法少女Noir（ノワール）が、誰もいない神殿内の通路で立ち止まり、膝を付いた。

　通称ノワール。
　その外見は小学校高学年程度の少女。
　天の川めいた銀髪は非常に美しく、ペリドットの如き瞳はさながら精巧なドールを彷彿とさせる。
　だがその表情は既に絶望に満ちていた。
「噂には聞いてたけど、あのコケシにあんな効果があるなんて……。あんなものがニンジャの手に渡ったら、私たちはおしまいだわ！　なんとしてでも守らなくちゃ！」
　聖なるコケシには強制魔導行動コードが仕込まれており、視認しただけで脳内へ強烈なサブリミナル情報を無理矢理送り込まれる。
　これは魔法少女だけが甘受できる特殊コードであり、脳内麻薬を過剰分泌させて魔力制御を一時的にダウンさせるのだ。
　分かりやすくいえば、処理しきれないほどの情報量を魔法少女という名の生体サーバーへアップさせてハングアップさせる恐ろしいプロトコルである。
　その恐怖の片鱗を味わったノワールは、呼吸を荒げてこぶしを握り締める。
「ふざけた造形だと思っていたけど、なるほど、納得だわ。あんな幻覚を見せられたら戦争どころじゃないもの。作った奴はイカレてるわ！」
　怒声をあげるノワール。
　その怒りに歪む表情も、少女然として端正である。
　だが、その正体は滝原レオン。寝子高生２年芸術科８組のもれいび、そして男だ。
　彼はスルメ臭いカオスティックエアーに飲まれた際に性格はおろか性別が完全に変貌を遂げていた。
　なので今、ここにいるのは魔法少女のノワールたんである。
　その事に異論を挟んではいけない。
　というかノワールには挟むものがない。女の子だからね。
「とにかく、魔法で視界に入れないようにしながら御神体を守らないとだわ！　全く、御神体の作成者がいたらぶん殴ってやるわ！」
「そうか、でも殴られるわけにはいかないな？」
「誰！？」
　柱の影から身を乗り出すは、セーラー服姿の八神修だった。
「変態だー！？」
「む？　何処だ変態は！？　このセーラー魔法少女ヤガ＝ミンが相手だ！」
「変態はお前だー！！」
　ノワールの飛び蹴りが八神の腹に突き刺さった！
「おぶっ！？　ま、待ってくれ！　この服装は伝統ある由緒正しき水兵の制服だ。現代の女子制服の原型だ、何も問題はない！」
「……まぁ、いいわ。これからアンタよりキャラの濃い変態がわんさかここに集結するはずだし、いちいちツッコミを入れてたら天の声から『不憫乙』とか心配されかねないわ。そういえば、殴られるとかどうのこうのとか、どういう事かしら？」
　ノワールの質問に、セーラー服姿の八神がいい笑顔で答えた。
「あの御神体、俺が設計図から携わった傑作品だからな。その制作者である俺が殴られるのは大変不本意極まりな……」
「チェストー！」

　ノワールの腹パン！
　こうかはばつぐんだ！
　八神は出オチになった！

「……いきなり、諸悪の根源を倒せたのは僥倖だったわ。あとは御神体をどうにかしないと……」
　スカートが捲れてケツ丸出しでぶっ倒れている八神を放置し、ノワールは他の魔法少女と落ち合うべく神殿内を捜索するのであった。

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