夢渡り｜リアクション

夢渡り

●椿美咲紀の夢
「あなたは最近、どんな夢を見ましたか？」
　そう尋ねられ、美咲紀は少し考えてからゆっくりと話し出した。
「そうですねえ……最近見た夢は、新しいお友だちができる夢でしたよ」

　　その日見た夢は、何とも不思議な夢でした。
気が付けば私は森のような場所にいて、
ゆったりと森林浴を楽しんでいたようなのです。
でも、よく見たら周りの様子は少しだけ普通の森とは違っていて。
木々の幹は淡く青みがかった白色。
あまりに幻想的な色で、一瞬発光しているのかと錯覚するほどなのです。
そんな木々の上のほう、枝についた葉っぱは……
うーん、青緑色と言いましょうか、孔雀の羽根の色に似ていましたね。
ふと視線を落とせば、足元に植わっているのは天鵞絨色をした草。
朝露なのか、なんとなくきらきらと輝いているようにも見えますが
よく見ようとするとなぜかきらきらが逃げるような感覚があって、
詳細はわからずじまいでした。
朝露がきらきらとするから、木漏れ日もあすのですが、
肝心の太陽の方向もはっきりしないのですね。
見上げてみても、木々のピーコックグリーンの葉っぱに隠れて
空はよく見え無かったのですけれど、
周りはとても明るくて景色を楽しむのには一切支障はなかったです。
空と草原を吹き渡る風が、
そよそよと私の頬を撫でてとってもキモチイイのです。
そうやって、木々の葉擦れの音に耳を澄ませていれば、
遠くで何か楽しそうにさえずっている鳥たちの声も聞こえてくるのです。
　そうして、しばらく鳥たちのおしゃべりに耳を傾けたあと、
次に私は周囲の木々を観察することにしました。
　なんていう樹かな？　と近づいてよく見ると、
淡く青みがかった白さの外樹皮は
樹木であることを忘れそうなくらいなめらかで
手で触れるとすべすべとした感触が心地よいのです。
さらに、手触りのおかげかそれともほかに何か理由があるのか
よくわかりませんがとにかく、
この木の幹に触れていると、なんだか自然と心が落ち着くのです。
そうやってすべすべして遊んでいると、
すぐ後ろでがさがさと物音がするのです。
なんだろな～、と見てみたら、いつの間にかすぐそばにお馬さんの姿を発見。
お馬さんは一見真っ白な馬なのですが、
よーく見たら少～し緑がかっているですね。
不思議な色合いの毛並みがとっても綺麗なので、思わず見とれてしまいました。
さらによく見れば、額に角が１本、立派な鬣の間から姿を見せているです。
角は青磁のような質感で、色合いも相まって大変涼やかなイメージでした。
そのあまりに綺麗な姿に、綺麗なのです～と口をついて出てくる言葉を
止めることはできませんでした……。
私が笑顔でいたからなのか、
お馬さんのほうから渡し物近寄ってきてくれたりして。
お馬さんも、私に興味持ってくれたですかね～。
白い毛並み、美しい角、さらによく見れば
蹄はふたつに分かれています。偶蹄目なのです。
たしかこういった特徴を持っているお馬さんには
なにか名前があったような気がするのですが
その時の私はな～んにも思い出せませんでした。
ただ、その子がとっても気持ちの優しい子だというのはわかったので、
近くに来てくれたその子に、ここはとてもキモチいい所ですね、とお話しすると、
なんだかその子の瞳が穏やかになった気もしたのです。
たぶん気のせいじゃないと思うのですよね。
その子も機嫌良さそうに、ゆらゆらとしっぽを振っていましたし。
しっぽ、同じですねぇ、と私の髪の毛を見せてあげたら、
また少し仲良くなれた気がしました。
なんというのでしょう、おそろいゆえの親近感？　でしょうか……。
そのまま二人でのんびりと、周りをお散歩したり、お空を眺めたりしているうちに
気が付くと私は目を覚ましていました。

「というところでしょうかねえ……あれ？」
　美咲紀が話し終えて顔を上げると、
ついさっきまでいたはずの彼らの姿が消えていた。
「夢でも、見ましたかね？」

このページにイラストを設定する