全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第二区間）｜リアクション

全力疾走！　寝子島横断三人四脚駅伝！（第二区間）

【猪突猛進こそわれらが……】

　3チームの中では、【蝶】の少し後に続くことになった【猪チーム】。
　第二区間では、ひょっとしたら順位が入れ替わる可能性があった。
　それだけに、参加する3人は気合が入っている……コスプレ以外は。
　いや、コスプレが悪いわけではないのだが、大丈夫かそれというコスプレだ。
　それを伝える前に、まずチームを紹介しよう。
　中央に白真白を配置し、右側に南雲秋月、左側に桜庭円という配置だ。
　さて、肝心のコスプレだが。
　中央の真白は、スキュラ。
　スキュラはオデュッセイアなどに登場するモンスターで、姿かたちの差異はあれど、上半身は女性で、下半身は魚っぽくて、腹部からは複数の犬が出っ張っている形だが、最近では蛸の足などになっている。
　つまり、多脚生物である。
　そして、秋月はどこから調達してきたのかルブロンオオツチグモのコスプレだ。
　別名ゴライアスバードイーターという名前を持つタランチュラで、世界最大種の毒グモである。
　なお、コスプレなのでかなり大きく作ってあるが、実際は足を含めて20~30cmほどになるという。
　当然多脚生物である。
　そして、最後に円のコスプレは最近動画で勃興してきたシェアワールド世界の生物だ。
　クトゥルーとよばれる神の一柱であり、深海の神様である。
　姿かたちは異形であり、今回の円のコスプレは軟体動物がもとになったと言われている。
　当然脚がいっぱいある生物だ。
　つまり、このチームはいわゆる「多脚」をメインにしたコスプレをしていたのだ。
　一応、紐を結ぶ脚の部分はきちんと出している。
　いや、出さないとそもそもどこ結ぶんだという話なのだが……ともあれ、真白が何やら結び紐に工夫を凝らしていた。
「堅結びをした後に結び目を湿らせるとほどけなくなるって前テレビで見たんだよね」
　そう言って言葉通りのことを実行する真白。
「それよりも皆。脚多すぎて問題だね。これで足の部分を振り回してビシビシも出来るよ！　しないけど！」
　細かいことは任せている円。結び目は気になるが、どっちかというと周りのことが気になるらしい。
　いや、異彩があるのは事実なのだが。
　真白と円がコスプレやら結び目やらのやり取りをしている間、秋月はそんな2人を見てぼんやりと考えていることがあった。
（まさか私が一番ののっぽになるとは思ってもみませんでしたよ。ちょっとした優越感ですね）
　しかし、顔には出さない。
　秋月の身長は152cm。対して年齢的に上な円は140cm、同じく年上の真白は119cm。中央の真白が一番身長が低い。
　身長に関しては問題が根深く、分けてあげられない以上増やすことも減らすこともできないのだ。
「あ、ところで。南雲ちゃんの衣装もかわいいね」
「可愛いでしょ？　去年の蜘蛛学会の大会に来ていったら、大人気だったんですよ」
　そんな思考を打ち切るかのように話しかけてきた円に返す秋月。
　真白は（蜘蛛学会？）と思ったが口には出さない。
　その代わり、確認するように告げた。
「3人で1・2、1・2と掛け声を合わせて走ろう。タイミングを合わせるのが一番大事だからね」
「「了解」」
　そう言ってたところで、第一区間の選手が到着し、スタートとなった。

　最初の凹凸コーナーは、真白が中央でバランスを取りながらを覚悟していた。
　しかし、秋月は特にバランス感覚に注意しており、真白も同じくバランスに注意していたので大きな苦労をせずに凹凸コーナーを抜ける。
　そして、スモークコーナーに至っては、真白の【鋼の如く】により対策済み。
「視界が塞がれちゃうしここで道を間違えないようにしないとね、とくに、ルートから外れないように！」
　という真白の元事前にルートを叩き込み、イメトレも重ねた。
「やるからには勝ちたいですよね！　がんばります」
　秋月の気合が入り、円もさらりと並走する。
　途中、他の名もなきチームを抜きながら、一気に【蝶チーム】へと迫る。
　なお、秋月の【スパイダー・ゴッド】は使う機会を逸した。
　思ったよりもスモークコーナーに苦戦しなかったからである。
　ただし、本人はどこかほっとしていたという。

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