サイバテック・バトルフィールド｜リアクション

サイバテック・バトルフィールド

「応急処置」
　かじられたプログラムの中に重要な物を見つければ、瞬時に動き、同時並行で攻撃を続ける。
（どいつもこいつも、邪魔ばかり）
　Aoi04はくすっ、と笑った。どこかでゲーマーの気質がうずいたのかもしれない。彼女の手が踊るように動き、ガトリングガンがレーザーをばらまく。くるりと放射状に展開すれば、それだけネズミ型が消えていくが、それでもまだまだ湧いてくる。
「とことん、付き合ってあ・げ・る！」
　Aoi04は不敵にほほ笑み、ガトリングガンを唸らせ続けた。

　――勝手にデータを持ち出されても困る。
　――異物は速やかに排除しなくてはならない。

　先ほどから流れてくる情報に、Aoi04が同調の信号を発する。それを受け取った若者型の『CODE：048/WHITE』（以下、略称の『048W』と表記／志波拓郎）は当初腕の端末にメガホンを設置し、虚空を舞いながらレーダー波を発し、索敵していた。
　K-403.4が交戦を開始し、送られた信号から瞬時に行動を開始した彼は情報戦略と発信の担当で後方支援型である。そんな彼が今やっているのは、いくつものウイルスをばらまいている親玉を探す事だった。
「種類は２種……。でも、数が多い！」
「親玉を探すんでしょう？」
　そんな彼に通信する存在がいた。支援型AIであり、サイバーαでもサイバーβでもないプログラム【Wired Empress】（大田原いいな）である。
「協力していきましょ？　その方が早く終わるんじゃない？」
「……そうだな。それでいこう。俺がレーダー波を送り続けているから、そこからなにか感じ取れないか？」
　Wired Empressの提案に、048Wが了承の信号を送る。だが、その瞬間に彼はいくつもの反応を受け取っていた。
　そのすべてがWired Empressへと伝えられ、味方へと渡っていく。
　確かに彼らは確認した。大きな木馬からあふれる小さなウイルスを。そして、すでに対処に当たっている味方を。
　スレンダーなボディーを露出度低めの白いスーツに包んだ姿から、サイバーβの所属なのが分かった。048Wが確認のため信号を送れば、彼女は状況をかるく知らせる。内容をすぐさま読み取った048WはWired Empressだけではなく全ての味方プログラムへと状況を通達する。
「俺はマッピング情報を放つ。そっちは木馬を」
「まかせておいて」
　Wired Empressはすぐさま目標へのアプローチを始めた。目の前の防衛プログラムは苦戦しているようなので、手助けしたくなったのもある。
　048Wはさらに情報を拡散する。それと同時にマッピングした情報も放っていく。そして、彼は何かを見つけると徐に腕の端末を床の刺し、ワイヤーフレームの床を歪める。
（この領域の情報を持ちだされるのはまずい。……時間稼ぎになるといいのだけれども）
情報を守るようにネットを構成し終えると、彼はモニターを呼び出して状況を確認する。
　つぎからつぎへと来るネズミ型をAoi04がガトリングガンで次々に仕留めていき、Collectがカラス型を相手に銃で奮戦する。K-403.4が狐型のバスターコードを放ち、データを守ろうとしている。だが、その中で048Wは微妙な異変を感じ取っていた。
（K-403.4の動きがおかしい？）
　僅かなタイムラグ。だが、それが破滅を招くことを知っている。彼は瞬時に決断した。
「応援に向かうべきか」
　048Wがそこへと向かおうとした時……、動きに齟齬が見られた。否、彼もまたタイムラグを覚えた。
（！？）
　周囲を巡れば、カラス型が飛び交っているのが見える。彼は様々な予測をしながらも、状況を味方へと通達していくのだった。

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