なんだかとっても、たのし草！｜リアクション

なんだかとっても、たのし草！

「はじめまして、御巫時子と申します･･････」
「ああ、どうも･･････草に話しかけられたのに、あなた平気なんだね･･････」
　毒気を抜かれたような様子の草に、時子はにっこりと話しかける。
「なにかちょっと、見過ごせないような風情がありましたので」
「ああ、僕は『お世話し草』。誰かのことを世話したくなる、っていう草なんだ。だれか知り合いになりたい人がいたとき、自分から奥手にならないでいられるよ」
「お友達が作りやすいのですね」
　どうぞ、と、体の一部を差し出す草に、礼を言う時子。

（だれか、知り合いになりたいような人ですか）

（あら･･････）
　御巫時子は、見慣れぬ顔を認めて、足を止めた。
　最近オープンした、ちょっとおしゃれな和風オープンカフェ。
　その片隅で、難しそうな本を読んでいるのは――。

（四十九院先生？）

寝子高に新しくやってきた四十九院。
なにかわけでもあるのか、人なつっこい寝子高生たちのあいだでも、妙にういた存在である。
「･･････」
先ほどの草の影響か、とことこと鸞の元に歩み寄る時子。

「ご一緒して、よろしいですか？」
笑顔で話しかける時子に、けだるそうな視線を向ける鸞。
「気の利いた話など、できなっくてよ」
「先生のお世話が焼きたくなりまして」
「変わった子ね」
　あけすけな時子の様子に、いくらか表情を和らげる。
　対面の席に座ろうとする時子を軽く制して、
「店員さぁん」
　繻子の黒手袋をはめた右手をひらひらと振る。

「――奥座敷のあるカフェなんて、変わっていますね」
「のんびりできるの。気に入ってるわ」
　なんでも頼んで、と鶯はけだるげに時子にメニューを渡す。
　一礼してメニューを手に取った時子、鸞の様子に気づいた。
「暑いのですか？」
「一寸、躯がなれなくって」
　言いながら鸞は、羽織った黒のストールを、しどけなく脱ぐ。
　人のものとは思えないような、陶器のような白い肌があらわになる。
「いいや、脱いじゃえ」
「あらあら、脱いではいけませんよ」

　五月の暑いくらいの陽気も、日陰に来れば大分和らぐ。
　自然の涼しい風が店内を満たした。