おいでませ寝子島へ｜リアクション

おいでませ寝子島へ

☆未成年じゃないのに！

　寝子島島民のシオ・レイゼルオークは、星の交易所でうきうきワクワクと民芸品を眺めていました。
（これメッチャかわいい～）
　古い魔法書めいた手帳とペンを手に取って店主の星野メイに声をかけます。
「これください！」
　うっとりご機嫌オーラ全開です。
「お客さん、お目が高いねー」
　メイがレジ打ちをしていると、　
「こんにちは～。メイ、頼んでおいた冷えた缶ビールある？」
　アリス・ミーティアがやってきました。
「こんちわ～。用意してあるよ」
「じゃあ換金お願い。そのお金で払うよ」
　そう言いながら高そうな宝石や骨董品を取り出します。
「すごい」
　シオが思わず見惚れると。
「これ？　報酬でもらったり依頼でゲットしたりしたお宝なの。腕はいいんだから」
　アリスが銃を撃つ真似をしてみせます。
「これはこの前受けた依頼でね、偶然隠し通路見つけてお宝いっぱいもらっちゃったの。今度メイにも奢るね」
「おー、期待しちゃうよ？」
　手早く換金しながらメイが言います。
「うん、Ｂａｒアストラルで一緒に生中飲もうよ！」
（生中？）
　シオがびっくりしていると、メイが言います。
「ほんとビール好きだね～」
「だって５００歳超えてるのにこっちでは未成年に間違われるんだもん。身分証とか作れないし」
　確かに、小柄で可愛いアリスは１４歳くらいにしか見えません。
「こちらにはいつ頃来られたんですか？」
　のんびり声をかけたシオにアリスは答えます。
「寝子島にはちょくちょく来てるよ。だって面白いんだもん！」　
「はい、冷えたビールお待たせ～」
　冷蔵庫から出した缶ビールを、メイがアイスボックスに入れてくれました。
「天気も良いしビール日和だよね。冷えてるうちに良い場所見つけなくちゃ。人目に付かず景色のいい場所……灯台に腰かけて飲むのも良いね。メイ、最適な場所教えてくれない？」
「あの、九夜山の展望台は島を一望出来てオススメですよ」
　シオが言いました。
「今の時期だと蛍も見れるらしいとか」
「蛍？」
「えーと、お尻が光る虫なんです。綺麗な水辺に生息していて」
「星虫のことかな？　見たい！　ありがとう、さっそく行ってみるね！」
　駆け出そうとするアリスを呼び止め、メイはおつまみを取り出します。
「おつまみ安くしとくよ～」
「ありがとう♪」
　商売上手なメイでした。

　アリスは教えられた通り地図を見て、九夜山の展望台に着きました。
「うわあ、すごい！」
　暗くなりかかる中、少しずつ増えていく町のネオンが、アリスには蛍のように思えました。
　星幽塔のアリスの住む街では山を見たことがないので、展望台から見える夕暮れの景色はとても新鮮でした。
　ベンチに座り、おつまみを手にビールを飲み始めました。
「大勢で飲む方が好きだけど、酒場は入れないしね。星幽塔では飲み放題だったのに！」
　残念がりながらアリスは思います。
（今度、誰かを誘ってみようかな）
　自分と同じ悩みを抱えているほしびともいるかもしれませんし。　
　

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