フジコ・エルアモールのエンジェルセラピールーム｜リアクション

フジコ・エルアモールのエンジェルセラピールーム

　セラピー受講者：響タルト

　響タルト、１６歳。
　女子高生。悪戯好きで面白いことも大好きな、ポニーテール女子。

　部屋に入った瞬間に、
「フジコ・エルアモールさんって寝子高のフジコ先生なのかな？　それは言わないお約束なのかな？」
　なんてことを言っちゃうようなおちゃめさんである。
「ほほほほーー！！　ラブ・エンジェル・ハリケーン！！！」
　フジコちゃんのにこやかな必殺技がタルトを襲い、最初の質問はなかったことになった。

　椅子には、ボロボロになったタルトが座っている。ボロボロだが、まあまあ嬉しそうである。
　タルトは、まるで授業のわからないところを質問するかのように、ぴんっと手を上げた。
「フジコ先生、相談です！」
「はい、響ちゃん」
　フジコの方も先生っぽく指名する。タルトは指された生徒の如くその場に立つと、こんな相談をした。
「僕はＢＬが大好きなんだけど、弟でカップリングしようとすると怒られるんです。弟をＢＬ好きににして萌えに協力してもらうにはどうしたらいいでしょう？」
　けっこうひどい姉だった……。
　しかし、どんな質問にも真剣に向き合う。それがフジコ・エルアモールのエンジェルセラピールームである。
「あたしが思うに、弟さん、嫌よ嫌よも好きのうちってことはないかしら？」
「嫌よ嫌よも好きのうち？　やっぱりそうですよね♪　弟は同室の男子とクラスも一緒で、ライバルとして張り合いつつすごく仲いいもの」
「ああ～ん、男の子と同室だなんてチャンスがいっぱいじゃない！　あなたはそれでご飯三杯はイケルでしょ？」
「イケます！　でも弟は嫌がってて。どうしたらいいですか」
「それはねえ～口じゃ説明できないわ！　今度二人をあたしのところに連れていらっしゃい！　手取り足取り腰取りで、いろ～んなことを教えてア・ゲ・ル♪」
「い、いろんなことって？」
　タルトの鼻息が荒くなってきた。
「いろんなことは、いろんなことよ～ん」
　ふぅ～～っとタルトの耳元に、熱い吐息を吹きかけるフジコ。タルトの期待はいやが上にも高まる。
「その気のない男子高校生二人がドＳな先生の指導で……シチュエーションは放課後の特別教室とか！？　うわあ～～滾ってきた～～～夏向けの同人誌のプロット、今なら一冊分描ける！」
　タルトは猛然とノートに男の子同士のくんずほぐれずを描き始める。
「ところでフジコ先生はどういうカップリングが好きですか？」
「あは～ん、あたしは何でも大好物よ。でもやっぱり筋肉が美しいのが好きね！」
「そういえば、フジコ先生は悩みはないの？　僕で良かったら聞かせて～、役に立てるかも」
「ほほほ、フジコ・エルアモールの悩みは、自分が美しすぎることよ！」
「あーそれかー。ごめん、それはお役に立てないや」

　そんなこんなで一冊分のプロットが出来上がってしまったタルト。
　セラピールームを出て、初夏の空を見上げながら思う。
「嫌よ嫌よ、も萌えるね！」
　今度、弟と友人をフジコ先生のところに連れて行ってみようと考えて、ふと最初の疑問がよみがえる。

「フジコ・エルアモールさんって寝子高のフジコ先生なのかな？　それは言わないお約束なのかな？」

（※個人の感想です）