フジコ・エルアモールのエンジェルセラピールーム｜リアクション

フジコ・エルアモールのエンジェルセラピールーム

　セラピー受講者：三折部朝衣

　三折部朝衣、１９歳。
　寝子島町役場勤務、公務員。仕事ぶりは真面目。　
　旧市街の住宅街に両親と中学生の弟と暮らしている朝衣は、昨日の仕事帰りにうっかりエンジェルセラピールームというところに足を踏み入れてしまい、得体のしれないセラピストから『明日は徒歩で通勤しなさい』という言葉を頂いた。

　今朝は、普段より少し早めに目が覚めた。普段より少し早めに身支度を整え、普段より少し早めに自転車に乗ろうとして、ふと、昨日のお言葉が甦る。
「──徒歩で通勤、ねえ……？」
　勤め先の寝子島町役場へはよほど悪天候でなければ自転車で通勤しているが、町役場も自宅も同じ旧市街ではあるので、その気になれば徒歩でも行ける。
　時計を見れば時間の余裕はたっぷり。
「──せっかく少し早めに起きたのだし、歩いて出勤しようかな」

　天気は晴れ。
　気温は快適。
　朝の日を浴びて、街路樹は翠玉の如く輝き、犬が元気に散歩している。
　職場までの道をのんびりと歩く。
「あら、こんなところにお地蔵様が」
　道端に赤い前掛けをつけた可愛らしい地蔵が立っていた。
　普段自転車でさっさと通り過ぎるので、なかなか気づけなかったのだ。
　しゃがみ込んで手を合わせる。
「お地蔵様おはようございます。今日もお仕事頑張ってきますね」
　何だか朝からほっこりした気持ちになってきた。

　さらに道なりに歩いていくと、眠たそうな猫の親子連れに遭遇した。
　これも普段だったら自転車でさっさと通り過ぎるような出会いだ。
　けれど今日は歩きだから、どこに行くのかな、と視線で追う。
　すると猫の親子は軒先のコンクリートのひなたのところでにゃあと鳴いて、そのまま二匹でまるまると、とろり瞼を閉じて居眠りを始めた。
「いいもの見ちゃった」
　撮影しようとスマホを取り出してみたけれど、シャッター音で起こすのがかわいそうになって、結局やめる。
「うん。心のカメラに収めるだけにしとこう」

　親子猫の姿を愛でた後、また歩いて途中の自販機で飲み物を買った。
「やった、当たりでもう１本！」
　これをラッキーと言わずしてなんと言おう。
　初夏のさわやかな朝の空気の中を歩きつつ、今朝出逢ったいくつかのささやかな幸運に幸せを感じながらいつもより５分早く職場へ着く。
　窓を開けて風を入れ、自分の机と上司たちの机を拭く。
　席につき、綺麗になった机の真ん中に、さっき当たった珈琲缶をとんと置く。
　――『明日は徒歩で通勤しなさい』。
　出逢ったものは、お地蔵様と、猫の親子と、当たった珈琲缶。
　フジコ・エルアモール、超怪しかったけど、意外といいこと言うじゃない。
　朝衣は珈琲缶を開け、窓の外の緑を見ながら、いつもよりちょっぴりおいしく感じられる珈琲を味わった。

「今日はいい一日になりそうね」

（※個人の感想です）

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あとがき

担当マスター：網透介
ファンレターはマスターページから！

　セラピー受講者：網透介
　フジコ様のおかげでリアクションができました！

　どんなガイドを出せばいいか迷っていたんですが、
　フジコ様が「私でガイドを作りなさい」と言ってくださったおかげで
　こうして書きあげることができました！
　しかも、来てくれた方が全員女の子だったんです。感激しました。
　僕もハーレムをつくる日が……え、来ない？　もっとまじめに仕事しろ？
　わ、わかりましたからっ、腰押し付けてくるのやめてください～～～～っ。ひいいいいっ！！！

（※個人の感想です）

　まじめなあとがき。
　皆さん、ご参加いただきありがとうございました！

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