Ｏｈ！イエス！めいっぱい本当のジブン！｜リアクション

Ｏｈ！イエス！めいっぱい本当のジブン！

　
　書き終わった瞬間、先ほど体にまとった布は、はらりはらりと落ちていた。
「みなさん、わかりますか？」
　教室の隅では、桜花寮で見かけた少女がノートをつけていた。
「私の天才的頭脳だとわかってしまいますけどねー」
　しかし、ここはダーク・ネコジマシティのダーク・ネコジマ・ハイスクール。事はそう簡単には進まない。
「全裸先生！」
　再びブラック・ポニテーノが勝手なニックネームで先生を呼ぶ。
「そのお婆さんの髪型は、ポニーテール？」
　ポニテーノはこの世界のすべてをポニテに変えてしまおうと企む極悪非道のポニテ・ヴィラン会会長だ。彼にとって、お婆さんがポニテかどうかは何よりも重要な情報と言えるだろう。
　ゼンラーニ先生は華麗に片足をあげてポニテーノの机に載せると、にっこり微笑んで答えた。
「ポニーテールです」
　なるほど、という顔で考え込むポニテーノ。
　教室の空気が張り詰める。
　しばしの沈黙を破って、ポニテーノが答えを導き出す。
「３番、全裸になる！」
「正解、全裸になる！」
　瞬間、ヒーロー生徒たちの何人かはゼンラーニ先生の闇サイドならぬ全裸サイドに堕ちてしまった。
　この教室は、ヴィランに完全に支配されようとしていた。
「今日の授業はこれで終わり――」
　とゼンラーニ先生が言いかけた時、ひとつの希望が現れた。
「ちょっと待ってー！」
　ぼわわ～ん。
　教室に異空間の四次元ホールが出現。
　正義のヒーローがくるくるまわるＵＦＯに乗って現れた。
　やがて回転スピードがゆるやかになると、それはＵＦＯではなくコタツであることが分かった。
「スペース・コタツムリン、参上！」
　くるくるまわるコタツから顔を出すのは雨寺凛……ではなく『スペース・コタツムリン』。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って～。これ、もう、ほんとまわりすぎ～」
　愛用のヒーロー・マシンのようだが、どうしても目がまわってしまうらしい。
　ゼエハアゼエハア言いながら教卓の上に着地すると、コタツから上半身をずるずると出してきた。
　どうやら布団をすっかりかぶって寝ていたらしい。さすが頼れるヒーローだ。
　みかん色のスペース・ハンテン・スーツを着込んだ彼女は、コタツのみかんを食べながらポーズをとる。
「この世の悪事は、この私が認めない！　道徳の授業はやり直しを求めるわ！」
　ギュイーン！
　いつの間にか取り出したスペース・ギターを掻き鳴らすと、その音はヒーロー的衝撃波としてビビビッと飛び出してゼンラーニ先生を直撃！
「う、うわああ……」
　実にあっさりとヒーローの勝利！
「も、もっと～」
　ゼンラーニ先生はさらなる刺激を求めて、目を瞑ったまま彷徨い、教室から出て行ってしまった。
　正義は勝利した……のだろうか。
　しかし、これがダーク・ネコジマ・ハイスクールが生まれ変われるキッカケになるかもしれない。
　コタツムリンは生徒たちに呼びかける。
「みんな、校長先生を助け出そう！」
　ヒーロー校長はヴィランに囚われている。
　それを救い出して、学校を、そして世界を変えようというのだ。
　さすがはヒーロー！　なんて、無茶な連中だ！
「仕方ねえな、つきあってやるか……」
「あーら、私がいないとヴィランを倒せないわよ？」
「おれは、ヴィランに借りがある。やらせてくれ」
　教室のヒーロー生徒たちがひとり、またひとりと立ち上がっていくのだった。
　その頃、校長室ではとある男がとても恥ずかしい格好でヴィランに縛られていた。

「あ、あの……僕は校長ではなく、ただの眼鏡屋なんですが…………」
　

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