５月の☆ハッピーバースデー｜リアクション

５月の☆ハッピーバースデー

●２１日

　つやつやした金色の髪に、緑の瞳。はっと目を惹く可愛さだが口を開けば関西弁。そのギャップがまた何とも可愛らしいマリベル・ロイス。
　今日で１６歳になりました！

（いやー、寝子島に来てからもうこんなに経つんやな）
　桜花寮のベッドで。お気に入りのマットレスの上でころころしながらマリベルは感慨に浸っていた。
　寝子高に来てから今まであっという間だった気がする。それだけ刺激的で楽しい日々だったのだ。いつの間にかウチも１歳年を取って、念願の素敵な彼氏も……。
（……おらへんがな、うう）
　綺麗な金髪を跳ね上げ、マリベルはぽすんと枕に顔を埋める。しかしすぐにガバッと顔を上げた。
「いやここはへこたれへんで！」
　むん！　と意気込むとマリベルは起き上がり、自分のニャンパッドを取る。そして慣れた手つきでねこったーを開くと、そこにこう投稿した。
『５月生まれの寝子島の皆さん！　ハピバ写真を一緒に撮りませんか？　連絡ください！』
「『誕生日をニャンスタで盛り上がろうキャンペーン』や！」
　むっふっふと笑うと、マリベルは手早く着替えて、財布を引っつかむと５月の青空に飛び出した。
　寝て待っていても果報は来ない。だったら、こっちが動くだけや！

「先生、こんにちは～」
　向かった先は寝子高。今日は午前授業だったため生徒は大分帰宅しているが、職員はまだ残っている。マリベルは職員室にウォルター・Bの姿を認め、声をかけた。
「はいこんにちはぁ」
　寝子高が誇るハイスペック教師はその青い瞳をマリベルに向ける。マリベルは何やら入っている紙袋を後ろ手にしたまま可愛らしく小首を傾げた。
「先生、５月誕生日でしたよね？」
「ああ、そうだよ。よく知ってるねぇ」
「ウチも５月なんで！　実は今日なんです」
「へえ、それはおめでとう！」
「いえいえ、先生もおめでとうございます！　それでね、先生……一緒に写真撮りませんか？」
「写真？」
　パチリと瞬きしたウォルターに、マリベルはうんうんと頷いた。
「５月生まれ同士、一緒に盛り上がろうって事で。それで写真をニャンスタにアップしたいんですよー」
「ああ、面白そうだねぇ。いいよ、別に」
　目の前の女子高生の元気の良さが可愛らしかったのだろう、ウォルターはくすりと笑う。キラン！　とマリベルの緑の瞳が輝いた。
「先生、ＯＫしましたね？」
「うん、したよぉ？」
「では、撮りましょう！」
　じゃん！　とマリベルが紙袋から出したのは、『Happy Birthday』ととってもカラフルに書かれたボードと、レインボー眼鏡。実はここに来る前にシーサイドタウンで買ってきたのだ。
　マリベルがきらきらした笑顔で言った。
「せっかくの誕生日やから、楽しくポップにいきましょう！」

　こうしてマリベルは、ウォルターと写真を撮ることが出来た。ウォルターも意外にノリノリで、とっても楽しそうな２人の写真がたくさん撮れる。その写真の中で何枚かを、マリベルは自分のニャンスタグラムに早速アップした。
（はー、楽しかった！）
　帰り道。マリベルはウォルターとの時間を思い出してにこにこする。そして何気なくスマホを見ると。
「あ、先生との写真に『いいにゃ！』がついてる！」
　それだけではなく、「誕生日おめでとう！」のコメントもたくさんついている。
「わ、うわわ。嬉しいな～！」
　マリベルはあたふたするやら頬がにやけるやら。
　彼氏がいなくても、十分楽しい誕生日になったのだった。

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