＜七福猫シリーズ＞毘沙門猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞毘沙門猫を探せ編

　幾人もの住人たちが、動き出したころ。誰が流したか不明だが、ねこったーにもこの出来事が流れていた。椿美咲紀も、それを読んだ１人だったりします。

「はっ？！　なんだか寝子高新聞部員として見過ごせぬ案件が発生しているのです？」
　毘沙門猫さんからの華麗なる挑戦状、ですね！　と目を輝かせたその時、美咲紀の目の前に肉まんが出現した。
「あらら？　これって肉まんですよね……」
　ねこったーでの内容を見、あむり、と一口かじって美味しさに頷く。美咲紀は少しだけ考えるとまず肉まんを完食。何を思ったのかスポーティーな格好に着替え、冷たいタオルや飲み物を用意したうえで自転車を外へ出した。
「毘沙門猫さん探し、私も参戦ですっ！　寝子高新聞部員として見過ごせぬ案件ですよっ！」
　勢いよく自転車をこぎ、目指すはシーサイドタウン。だが、肉まんやらシュウマイやらもついてくる！
「んん～♪　でも、でもでもこの中華料理もおいしいのです……。食べた分はカロリー消費しなくちゃ、あとから大惨事なのですっ！！」
　美咲紀はおいしいおいしい、とそれらを食べてきれいに口元をウェットティッシュで拭くと再出発した。
（んー、毘沙門天は武道系カミサマですから……そこに迷い込んだなら自然です？　それとも武道館移動の途中で落っこちた？　だったら大変なのですっ！）
　写真からみて予想した場所へと急ぐ美咲紀。彼女は（交通安全を守ったうえで）ペダルを漕ぎながらぽつり、と漏らした。
「どっちにしろ、スポーツセンターの武道場にお連れしなければ！！」

　美咲紀が自転車を外に出したころ。
佐藤瀬莉の脳裏に、いきなり好好爺然とした声が響いた。
（あ、恵比寿猫だ……）
　そう思った時には星ヶ丘にある自宅ではなく、シーサイドタウンにたたずんでいた。彼女はちょうど時計の修理技術の本を読んでいる最中だったが、あっという間の転移であった。
靴は履いているし財布も持っている（中身も充実している）。彼女はすぐにでも行動できる出で立ちであった。
（声が聞こえたってことは……、七福猫を探すのね）。
　今のところ、瀬莉は弁天猫、布袋猫、大黒猫、寿老猫と『七福猫』の仲間たちに関わっている。今回も縁あって呼ばれたのだろう。
　瀬莉はチラシに掲載された写真を見て、しばし思案する。その中で気になったものを心の中に記録する。
（空にお月様と複数の光。草原？に白いライン。そして「タジ」の立体文字。
これって……）
　瀬莉は思い当たる場所があったのだろう。その方向へと駆け出していた。

　勉強にいそしんでいた八神修は、問題集からチラシと月餅が飛び出したのを目撃した。普通ならば驚くところだが、普段から冷静な上幾度も神魂トラブルに立ち向かっていた修は、「おや？」と内心で首を傾げた程度だった。
（流石武神、だな）
　脳裏に聞こえた声にくすり、と笑いつつ彼はふむ、と頷きながら写真を注視していた。
（これらがひっかけ問題でないならば……）
　すぐに閃いた彼は支度を整える。ライトとデジカメを用意したら自転車に乗ってお出かけだ。
　そうして走っているとツインテールが愛らしい少女が同じ場所を目指しているのに出くわす。そう思ったのは方向だけではなく、チラシと中華ちまきを手にしていたからだった。
「そのチラシ……、毘沙門猫からの挑戦状だね」
「もしかして、お兄さんも？」
　修と少女……瀬莉は互いに名乗ると、互いに推測を話しながら歩きだした。
　その道すがら、修の目が光る。
「さて。ここからが本番だ。佐藤、写真から更なるヒントを探してみよう」
「そうですね！」
　瀬莉はワクワクしながら頷き、２人で写真をよく見ながら目的地へと向かった。

「何となく、スポーツの試合場等が連想されるんだよね」
　突如現れた肉まんに「おいしい」とほっこりとなりながらつぶやいたのは恵御納夏朝。彼女は写真に写された『短く均一に刈られた草』を見てそう考えた。あと２つの写真もじっくりと観察。そして目についたのは、規則正しく並んだ光。
「規則正しい眩しい光……夜に光……か。夜の試合なら照明を沢山照らしたりするよねぇ？」
　なんとなく予想がついた夏朝は、動き出す。そこで、待っているような気がして。早く見つけてあげよう、と手を握りしめて。
（毘沙門猫さんも居たい場所へ行けるように、かくれんぼに付き合って見付けてあげたいな）
　そう、彼女が小さく微笑んで顔を上げる。
　彼女が目を向けた先には……大きな寝子島スタジアムがそびえていた。

　８人は、突如現れる肉まんやちまきなどを食べながら、全員がそこへと向かっていく。そして……集合の時は来た。

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