天舞寝子杉｜リアクション

天舞寝子杉

　寝子杉の枝葉の下、一同は雨脚が弱まるのを待っていた。
「あーあ、雨、早く止まないかなあ」
　姫が退屈そうに呟いた。
何を隠そう、姫はここに来る前にロープウェイに着替えを預けてきており、
温泉に入って帰る予定までばっちり立てていたのであった。
「降れと言ったり、降るなと言ったり、勝手すぎます。
私達が望んだ結果なんだから、こういうのはちゃんと全身で受け止め……へくちっ！」
　姫の言葉に反論していた瑠奈も、歌って踊って熱くなった体を雨で急激に冷やされ
思わずくしゃみがこぼれてしまう。そんな瑠奈を見て、姫は面白そうに笑っていた。
「水に限らず……環境……全てのバランス……それが大事。
恵みの雨……よかった……」
「本当に、よかった。……ありがとう」
　ぼそりと安堵の一言を漏らす闇と並んだ夏朝が、
願いを聞き届けてくれた天にお礼の言葉を述べる。
「先輩、寒くないですか、大丈夫ですか」
　雅人が慌てて冴来の体を案じるも、冴来本人は至って平気そうだ。
「大丈夫よ、ありがとう。またたまに、ここに舞を奉納しに来るのもいいわね」
　などいって、ニコニコと笑顔を浮かべて、雅人の頭を撫でている。
「この調子なら、篝火もそのうち消えるだろう。
願いが届いたんだ、よかったな」
　そう言って、修はまほろににっこりと微笑みかけた。
「はい……。なんとかなって、ほんとうによかった」
「あとは何とかして山を下りるだけだな。
なんとかってなんだよって話だけど」
　白露はいつも通りの飄々とした態度を崩さず空を見上げていた。
葉月はといえば、歌い踊って疲れ切ったのか、寝子杉の幹に背を預けて転寝をしていた。
　そんな、思い思いに雨を眺める一同を、
寝子島のシンボル寝子杉は優しく雨から守ってやっていた。

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