愛とウサギとチョコレート｜リアクション

愛とウサギとチョコレート

■和みと和
　オオカミ男がコンビニからネコチキを齧りながら城へと戻れば、そこには新たな愛らしいウサギの姿。
「オオカミさん、こんにちはぁー！」
　愛らしい笑みをへにゃりと浮かべるのはウサギの着ぐるみ姿の曖浜瑠樹。
　その手には大き目な箱が抱えられている。
「ほう、そのチョコか。やけに大きいな」
　オオカミ男が紫苑やリリエルにペットボトルのお茶や塩気のある菓子を渡した後。
　堂々とした威厳を見せながら王座に座り、改めて瑠樹の抱えた箱を見た。
「うぅん、これはオレのだよぉ。でも、見せてあげるのは構わないんだぁ」
　その箱をオオカミ男に掲げれば、
「あら、愛らしいです」
「ウサギさんですね！」
　オオカミ男の傍でチョコをモグモグと食べていた紫苑やリリエルが声を上げる。
　瑠樹が持って来たのは一見、茶色いウサギのぬいぐるみ……と思いきや、チョコレートで出来たお菓子だった。

※画像はイメージです
「直接持っちゃうと溶けちゃうから、箱に入ってるんだよぉ。で、オオカミさんには……これだぁ！」
　瑠樹が悪戯な笑みと共に指をパチン、と鳴らせば。
　モブバニーボーイたちがガラガラと台車を押してきた。そこには瑠樹の背丈を軽く超える大きな箱。
「特大チョコぬいぐるみ、だよぉ！
　バーン！と特殊効果音が鳴りそうな程の大きさの箱。
　勿論その中身は瑠樹が抱えるものと同じ、チョコで出来たぬいぐるみうさぎ。だが大きい。無茶苦茶大きい。瑠樹が中に余裕で入れるレベル。
「これは、食べるのが惜しくなっちゃう愛らしさですね！」
　リリエルが瞳を輝かせてば、紫苑は
「食べ応えがありそうですね」
　挑む気満々である。
「チョコぬいぐるみも可愛いねぇ、和むなぁ。オオカミさんも、たーくさん和みますようにー！」
　にぱっ、と瑠樹の笑みが深まれば、オオカミもつい口元が緩んだ。
　瑠樹のろっこん『ゆるゆる和みと恩恵の輪』の効果もあるのだろう、瑠樹から発する癒しと和みとマイナスイオンがビシビシとオオカミへと伝わって。
「……ふむ。有難くいただこう。今はまだ喰わんが、飾らせていただく」
　その言葉に、わぁい、とぴょこぴょこと跳ねる瑠樹だった。

　瑠樹の和み効果もあり、バニー城はもはや貰ったチョコを皆で食べる贅沢なチョコ試食場と化していた。
　それでも、当のオオカミ男はどこか不満げな表情を崩さない。
「オオカミ男さんのお宅は、こちらでしょうか？」
　そんな中、静々とやってきたのは天満七星。
「あぁ、そうだ」
「チョコレートをお持ちいたしましたわ」
　そう言うと、手に持つ風呂敷包みからシンプルなチョコレートを取り出した七星。
「せっかくですので、いくつかのチョコレートの食べ比べをしていただこうと思いましたの」
　色の濃淡が違う一口サイズのチョコが数種類取り出された。
　それを丁寧にオオカミ男へと説明する七星。
「これで、お好みの味が見つかるとよいのですが……」
　オオカミ男が、ホワイトチョコレートを始め、ミルクチョコ、そしてカカオの産地の違うチョコを、水を飲みながら味わっていく。
「……ほぅ。こんなにも味が違うものなのだな」
　俺はこれが気に入った、とオオカミ男が指を差したのは
「あら、このチョコですか。不思議な風味ですわよね」
　店先でシーナが抱えていたチョコだった。七星自身も味見をした際、独特の風味があり美味しいと思っていた。
「私も食べてみたいです♪」
「オレもー！」
　と、紫苑や瑠樹が興味を示せば、七星もどうぞどうぞと包みを渡す。
（……これって、もしかして……？）
　ほしびとであるリリエルは気付いた。
（多分、ホットカカオのチョコ、ですよね。少し食べるなら沈静作用があったはずです）
　リリエルもその一欠片を口にする。
（やっぱりです！でも、確か、あまり食べ過ぎると副作用が……どうなちゃうんでしたっけ？）
　皆がチョコを楽しむ間、むぅ、と記憶の糸をたどるリリエルだった。