愛とウサギとチョコレート｜リアクション

愛とウサギとチョコレート

■オオカミとウサギとチョコレート
　この世界は、突如うさぎに埋め尽くされた。
　大人も子供もお爺ちゃんも。バニーガールやバニードレス、愛らしい着ぐるみ姿まで。もれなくウサギ尽くしである。
　驚き、恥じらい、困惑、歓喜。様々な反応を見せる夢の世界の寝子島で、曖浜瑠樹はふわふわな笑みを浮かべていた。
「わぁー暖かくて和むなぁ……」
　心から嬉しそうな笑みを見せる瑠樹。
　小柄な瑠樹の身体を、白くふわふわもこもこのウサギ着ぐるみが包んでいる。
　顔は出ているタイプのウサギ着ぐるみから見える瑠樹の表情はニッコニコであり、どうやらご満悦な模様。
　沢山のウサギ姿が歩く寝子島を興味津々な視線を持って散歩する。
　途中、オオカミの面を被る男による『ギブミーチョコレート』生放送が空というスクリーンに映し出されたものの。
「オオカミさん、チョコレートが欲しいのかねぇ」
　小首を傾げる瑠樹。
　あ、でも！と直ぐに思い出したのは、瑠樹の母の言葉。
「にゃんこやわんこにはチョコはだめってお母さんが……」
　忠実に母の言いつけを覚え、心配する瑠樹少年。
　大丈夫、あのオオカミ男、明らかに人だから！
　でも動物だけでなく人間だって甘いものの食べ過ぎは注意しようね！
「……神魂の影響だから大丈夫、だといいなぁ！」
　そうと決まれば、オオカミに渡すチョコを探しにＧＯ！と跳ねるように街を行く瑠樹ウサギだった。

　そんなオオカミ男の言葉に、やはり首を傾げている者は多々おり。
（貯古齢糖？わたしも好きですけれど……狼が食べても大丈夫なのでしょうか？）
　天満七星が首を傾げれば、同じ方向にウサ耳がへにょりと揺れる。
（空からお言葉を投げかけられたという状況を鑑みると……）
　七星は口元に指をあて、考える。
（むしろ大神、の方なのでしょうか？）
　もしかしたら、何かの神様なのかもしれない。
　ならばチョコレートを献上せねば、と一人納得する七星。ぽん、と手を叩けば、袖がふわりと揺れる。
（……でもわたし、なぜこのような格好なのでしょう……？）
　揺れる袖、とは言うものの。七星がいつも着こなしている和装ではない。
　いや、和装ではあるのだが……その身は、ウサギ。しかも、七星の雰囲気にあった和風バニー姿である。
　着物のような雰囲気にも見える和柄バニーはとても雅やかで、また愛らしい。
（他の方もみな同じような姿ではありますから、それが作法なのだとは思いますけれど……皆様、頭が重くないのでしょうか？）
　自身の頭に乗ったうさ耳をピコピコ揺らしながら、七星はバニーだらけの街をゆったりと歩くのだった。

※心の目でバニー化してください

　その頃の瑠樹ウサギさんと言えば
「ごっくじょっう♪ ごっくじょっう♪」
　着ぐるみに身を包んだ瑠樹が街を行く。鼻歌交じりで楽しそうな瑠樹の姿は周りを和ませる程に愛らしさを振りまいており。
「ごくじょうのチョコ……って、どんなものだろうねぇ」
　街には美味しそうなチョコレートが溢れてはいる、が。
「ぼくじょうのチョコ……は、ちがうよねぇ」
　北の牧場で作られた美味しそうなチョコに目を留めた瑠樹。
　むー、としげしげとパッケージを眺める。
　響きは似ているが、別物だろ、と瑠樹はそのチョコを棚へと戻した。
（極上……オオカミさんにとっての極上……）
　瑠樹は一生懸命に頭を捻る。
（うさぎ着ぐるみやうさぎと一緒にいるオオカミさんの……）
　その時、瑠樹に一つのアイディアがピコン！と浮かんだ。
　そしてアイディアが浮かんだ途端に、瑠樹の視線に鎮座するチョコを見つけ。瑠樹の瞳が瞬く間に輝いた。
「すみませーーん、このチョコレート……」

　満面の笑みと共に、店員に声をかける瑠樹だった。

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