愛とウサギとチョコレート｜リアクション

愛とウサギとチョコレート

■恋人たちが見る夢
　木天蓼市内にあるアパートの一室。
　恋人である城山水樹と濃密に愛を紡ぎながら眠りについていたヒュー・ヒューバートは違和感に突如目を開いた。
　見慣れたカーテン、そこから微かに差し込む陽の光。
　いつもの朝の光景、のはずが
（なんなんだ、この違和感）
　拭えぬ違和感にヒューはベッドの上で半身を起こす。
　隣には、昨晩の余韻のままに一糸纏わぬ姿で静かに寝息を立てる水樹の姿。
　の、はずが。
（！？）
　眠たげだったヒューの瞳が見開いた。隣に確かに水樹はいる、が。
（……うさみみ？）
　眠る水樹の頭には赤いうさみみ。首には蝶ネクタイ。
（……昨夜、そんなプレイしたかな……）
　愛の営みを思い返せば、つい口角が上がってしまうものの、昨晩にそのようなコスチュームプレイは断じて、ない。
　ならば、なぜ？そう思った瞬間、ヒューが自分自身に感じた違和感の正体に気が付いた。
　何も着ていなかったはずなのに、ぴったりとフィットしたエナメル感覚。
　そして
（……って、これって……！）
　やけに重みを感じると思った胸は、大きく膨らみ谷間はクッキリ。
（……女性の身体、みたいだね）

※心の目で女体化してください
　念のため、そっと自分の頭に手をやれば。やはりおそらく水樹と同じ形状のカチューシャを感じる。
（……どうしたものだろう）
　腕を組み、しばし考える。
　胸の下で組んだ腕は、ヒューのその胸の大きさをより強調させ……
「……ヒュー……？　起きてる、の？」
　もぞもぞと動くヒューの気配に、水樹がうっすらと瞳を開いた。
「おはよう、水樹」　　
　いつものように水樹へと愛情を込めて微笑むヒューだが……
「え？ヒュー？　え、あれ？私、服、着てた……！？　え、何！？」
　一気に目が覚める水樹。
　ガバッと身を起こし、己の身体をペタペタと触る。
　赤のバニーガール服に身を包んでいることを理解するも、目の前の人物の変化には直ぐには理解できなかった。
「ヒュー……よね？」
　目の前には、エナメルブルーのナイスプリティなバニーガールがいた。
　童顔気味な顔立ちに、それとはギャップのあるグラマラスな大人のボディを持つ女体化・ヒュー。
「信じてくれないかと思ったけど、僕だよ、水樹。どうやら僕は女体化したようだね。水樹はそのままだけれど……」
「……バニーガールよね」
「あぁ、バニーガールだ」
　また寝子島のフシギ現象か、と二人は揃ってやれやれ、と首を振る。
　どうしようかな、と立ち上がるヒューの女体化姿に水樹は改めて視線を送った。そして
（改めて見ると、ヒューってば凄く……）
　プロ顔負けだ、と思ってしまう程に、ヒューの肢体は整っていた。
　エナメルブルーのバニースーツは腰がキュッとしまり、ヒップの膨らみにかけたラインがぷっくりとバランスが良く。
　そして愛らしい表情とは裏腹に大きく主張するバストはツンと上向き、溢れんばかりの大きさを誇っている。
　プロのモデルとして活動する水樹にとって、この理想的な身体を得、またそれを維持するのは相当な努力を要するだろう、と察することが出来。
　もし、ヒューがモデル仲間だったとしたら相当な敵対心を感じてしまうだろう、と思う程に、ヒューの女性としての身体は水樹の理想に適ったものだった。
（悔しいけれど、愛する人なのに……嫉妬しちゃう）
　当のヒューはと言えば、足を包んだ己の網タイツに
「うわぁ、こんな着心地なんだね」
　とのんびりとした様子だったが。
　気づけば、水樹の視線。その視線はどこか羨ましそうにも見え
（えぇと……何か、僕、嫉妬されてる？）
　嫉妬心と切なさの交じる水樹の眼差しにヒューは
「水樹、きっと僕が元通りになる方法もあるさ」
　おいで、とヒューが腕を広げれば
「そう、ね。戻ってくれなくちゃ困るわ」
　と瑞希はヒューの腕にいつものように収まる。
　しかし、水樹に当たるヒューの胸、そして柔らかな抱かれ心地に違和感や複雑な思いを感じざるを得ない。
（……もし、ヒューの身体が元に戻らなかったら……）
　水樹は思う。
　いつぞや、過去に己の失恋の折に、ヤケになって同業者の女の子とベッドを共にしたことを思い出した。
（なんとかなりそうな気がする）
　楽観主義な水樹さんだった。

※心の目でバニー化してください

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