悠久のアクアマリン｜リアクション

悠久のアクアマリン

「なあんて素晴らしい石っころなんだろうねえ！
こんなに素晴らしいモノなら一攫千金も夢ではなかろう」
　舌なめずりせんばかりの笑みを浮かべてアクアマリンに歩み寄るのは、瓢だ。
「是非、頂戴したいねぇ……」
　瓢の、腹の底から湧きあがって来る妖気のような迫力に、一同は驚き気圧される。
ここまで一度たりとも邪気の片鱗も見せずに探索を進めていたのは
この時のためだったのかと思ってしまうほどの変わりようだった。
「おいおい、無粋なマネは遠慮してくれ」
　瓢の前に、修が立ちはだかる。
胡乱な眼差しで修を見た瓢はますますいびつな笑みを深めた。
「反対するのも結構だがねえ、ほら、見てごらん」
　瓢が示すは一同の足元。
泉や水路から溢れた海水が、靴底が浸るくらいまで迫っていた。
「制限時間がある以上争っている暇なぞ無いよ。わかったらあっしの言う通りにしな」
「そんなの、追い詰められてるのは骨削さんも同じです！」
　美咲紀が声を荒げれば、瓢はからからと笑い声をあげた。
「まあそのとおりだけどねえ。あっしに反対するなら、
あっしのろっこんでこの狭い洞窟ごとブッ潰して全員生き埋めになるか、
もたもたして満潮で全員溺れ死ぬかの違いさぁ」
「い、生き埋めっ！？」
「こ、困りますそんなの！！」
　メリィとリリエルがお互いに抱き合い震えあがる。
ゲースは口を挟まずに様子を見ているが、表情は険しい。
莉鳥と真白はなにか打開策はないかと周囲に視線を走らせ、
刀は持参した刃引き刀に手を添えている。
そうこうしているうちに海水は一同の踝まで上がってきて、
いよいよ瓢が腕を持ち上げた。
次の瞬間。
「あだっ！？」
　瓢が苦悶の呻きを上げ、頭を抱えてうずくまる。
「いまだよ！　誰か捕まえて！」
　声も上げず瓢の背後に移動していたのは、樹だ。
瞬間移動で近くにあった拳ほどの石を瓢の頭の上に移動させ、一瞬ひるませたのだ。
「よっしゃあ俺が引き受けた！　とっととずらかるぜ！」
すかさず体力に自信のあるゲースが瓢を抱え上げ、
そのまま海水を蹴立てて通路の方へと走り出す。
海水は既に膝下のあたりまで上がってきている。
慌てて他のメンバーもゲースの後に続いた。

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