大学生がやってきた！　～寝子島中学の日常～｜リアクション

大学生がやってきた！　～寝子島中学の日常～

「大学生の人たちがくるのね！　カッコいい人いるかしら。若い先生だなんてドキドキしちゃうわ」
　茶色の髪を三つ編みにした２年生の時高クレオは、実習生の噂を聞いて目を輝かせた。
（……っていけないわ私ったら、教育実習なんてそんな珍しいことでもないのにはしゃいじゃって、全然クールじゃない。平常心よ平常心……！）
　なんて意気込んではみたものの。
　廊下にはモデルのような妖艶な女子大生が！
「誰、あの美人。ほんとに先生なの？」
　さらに金髪青い目のかっこいい男子大学生も見かけて、どきどき。
（気にしていない、なんて嘘。こんなに美男美女がいるのに、気にせず一日を過ごすだなんて、クレオにはそんなのムリ～）
　自分もとっても可愛いのに、クレオはイケメンと美人にめっぽう弱い。

　そして授業時間にクレオの教室に現れたのは、あの美人の先生だった！
「城山水樹です、よろしくお願いします」
　モデルで視線には慣れているはずだけど、やっぱり中学生たちの注目を浴びて話すのは勝手が違う。
（モデルやってることは黙っていようか）
　と思っていた水樹だったが。
「先生、先生はモデルなんでしょ？」
　女子の一人の発言にざわめきが起こった。
「えっ？　なんで……」
「うちのお姉ちゃんの買ってる雑誌に出てるの見たわ。専属モデルなんでしょ？」
「えっ、なんていう雑誌？」
「せんせー、エッチな雑誌ですか？」
（ほんとにモデルだったなんて……）
　勉強どころでなくソワソワするクレオ。
「はいはい、静かに。エッチな雑誌じゃありません。それと、授業中はモデルの話はしません。教科書１４ページを開いてね」
　動じることなく生徒たちを静め。
（自分が中学生だった時ってどうだったっけ……どんな風に授業を進めたら、生徒たちに授業に関心を持ってもらえるかしら）
　真面目に考える水樹は、用意してきた資料を黒板に貼りつけるが。
「彼氏とかいる？」
　男子生徒の質問に思わずマグネットを取り落とし、顔を赤らめてしまった。
　慣れないことでアタフタしてしまうのは仕方ないが、モデルとしては感情を顔に出してしまうようではいけない。
　そう思って気を引き締める。
「授業中の先生には彼氏とか関係ありません。モデルとしての情報を知りたいなら雑誌を買ってちょうだい。さて、質問してくれた君に教科書を読んでもらいましょう」
　要領のいい水樹は、質問をそらしつつ宣伝し、自分のペースで授業を始めていく。
　クレオはうっとりとその姿に見惚れた。
（やっぱり大学生って大人だわ！　クレオも早くあんなふうになりたい）

　授業が終わると、水樹は生徒たちに取り囲まれた。
「モデルの話聞かせてくださいー」
「どうやってモデルになったんですか？」
「ダイエットの秘訣とかありますか？」
　女子生徒たちに質問攻めにされる。
「そうね、最初は読者モデルになったのよ……」
　そつなく答えつつ、時計を見て慌てる。
「次の授業があるから、また今度ね」
「えーっ」
　名残惜しまれながら教室を去る水樹だった。
　

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