素敵な１枚はきっとどこかに｜リアクション

素敵な１枚はきっとどこかに

●日記の１ページ

　学校の授業が終わり、リリー・ルーシー・クランはいつも通り送迎の車に乗って旧市街へ向かった。そしていつも立ち寄る店でタイ焼きとせんべいを買うと、車は星ヶ丘寮へ向かって走り出す。車はやがて橋にさしかかり、そのままシーサイドタウンへ。窓から外を見れば海が広がっていた。

（……なんだか車を降りて潮風をあびてみたくナッタデス）

　リリーが運転手にお願いすると、海に程ほど近く且つ邪魔にならないところへ駐車する。リリーははやる気持ちを抑えつつ、車から降りた。外の空気は街中とは少し違うように感じた。

「やはり潮風は気持ちのイイものデスネ」

　潮風特有の感触を楽しみながら先ほど買ったタイ焼きを食べ始める。ほんのり甘い味が口のなかに広がる。夕日を眺めながら食べる時間がどこか贅沢に思えた。

「それに今日は夕日がキレイなのデス。海辺の夕日を眺めていると遥か海の母国のことを思いだしマスネー。母国にいる家族は元気にシテルデショーカ？」

　ぼんやりと夕日を眺めながら物思いにふける。そのときふとリリーは思い立ちスマホを取り出した。この景色を写真におさめてニャンスタグラムにアップしようと考えたのだ。
　リリーにとってニャンスタグラムは家族に近況報告するための手紙であり、日記代わり。

「今日はこのキレイな夕日をアップシマショー」

　パシャッ。スマホからシャッター音がなり、画面には夕日とそれに照らされた海が写っている。その写真をニャンスタグラムにアップすると同時に文章を添える。
　
『タイトル:【寝子島生活◯◯日目。海辺の夕日。】
今日の夕日がキレイデース。海辺の夕日を眺めてるとこの水平線の向こうのワタシの母国のことを思いマース。お母様、お父様、ワタシは今日も元気にヤッテマース。』

　アップした写真を眺めながら、これを見た家族からどんな反応が来るか楽しみなリリー。

「さて星ヶ丘寮に帰って映画を見ながらせんべいを食べるデース」

　楽しいひとときを胸に車へ戻ると、それは星ヶ丘寮へ向けて走り出した。

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