いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな｜リアクション

いきなり関係進展！　リア充爆発できるかな

◆思い出のあの夜

『嘉島さん、そこちょっとめくってみてください』

　ホテルのスイートルーム、その寝室で嘉島和穂は今の状況に困惑しつつも、もしかして……と、そっとベッドの布団をめくってみる。そこにいたのは、クルト・エールヴァールの姿だった。しかし和穂は目の前の光景が信じられず、思わずその布団を戻す。
　――……やっぱりクルトさんだった……！
　想い人の姿にあわあわと平常心を保てない和穂。先程覗いた彼の寝顔を思い出して、かあっと頬を熱くする。
　――うう、どうしよう。寝顔もかっこいい……！！

「ここは……」

　和穂が内心恥じらいと喜びとで攻防している間に、クルトはその瞼を開けて目を覚ました。覚えのない場所に眠っていたことに気付くと、その中で見知った顔を見つけて安堵する。クルトはその人物の名前を口に出した。

「……和穂ちゃん？」
「お！　おはようございます！」
「……おはよう」

　不意に、名前を呼ばれた和穂は思わず大きな声を出してしまう。クルトはそれを気にせず返してから、彼女に状況の説明を求めた。

「えっと、実は……」

和穂から説明を聞いたクルトはすぐ部屋の扉を調べて、開かないと見ると鍵を探すも見当たらない。寝室に戻ったクルトは、和穂に向かって申し訳なさそうに言った。

「駄目だな。出られそうにない」

　クルトが部屋の中を調べていると、突如テレビのモニターに砂嵐が起こり、いつの間にか消えていたゆかりの姿がまた浮かび上がる。

『おはようございまーす！　いつも心にエンターテインメント！　司会の不知火ゆかりでーす。驚きました？　大丈夫、何もしません。それと残念ですが時間まで部屋から出ることは出来ませんので、諦めてくださいね』
「つまり、拉致監禁か。立派な犯罪だな」
『い、いやいや。そういうのではありません！　後で謝礼はお支払いしますし！』
「……違う？」

　かくりと首を傾げたクルトに、ゆかりはにっこりと笑いかけた。

『取材のようなものですから。時間が来るまで、じっくりとしっとりと。お相手様と親睦を深めてください！　というわけで、空気を読んで姿を消す、気の利く私です』

　ぷつりと消えたテレビを背に、クルトはやれやれと首を振る。

「全く、和穂ちゃんに何かあったらどうするつもりだ」
「い、いえいえ！　気にしないでください！」

　とりあえず危険がないとわかったとはいえ、やはりクルトにはどこか複雑な思いが残っていた。いつも通り――のようでいて、その実いつもよりも和穂のことを意識している――ように和穂は思えて、はわわとオーバーなリアクションになってしまう。

「嫌じゃない？」
「……わ、私はー……」

　クルトにこう聞かれて、和穂は俯きがちに言った。

「ご一緒するお相手がクルトさんで、よ、よかったなぁ、って」

　その後、顔を上げてしっかりと彼の顔を見る。和穂は一寸躊躇って、しかし勇気を振り絞って気持ちを伝える。

「ど、どんな状況でも、一緒にいられて嬉しいなって思っちゃうので」
「和穂ちゃん……」

　そこまで言った後、和穂はまた込み上げてくる恥ずかしさと照れくささに顔を赤くした。クルトはそれにくすりと笑う。二人は暫し、他愛のない話で盛り上がった。

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