深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会｜リアクション

深夜激走！　寝子島仮装マラソン大会

「さあて！　そろそろマラソンのトップ選手が見えてきたぜ！」
　マイクを持った寝子サンマさんの高らかな声と同時に、ディスプレイの映像が切り替わる。
「トップはあいつだァーッ！　まあトップって言うことは、かそマラのお楽しみポイント、クエストを無視して走っているってことでもあるんだけどな。一応トップはトップだ、優勝候補だぜ。拍手と喝采の準備をヨロシクゥ！」
ディスプレイに映し出されたのは動く要塞。その巨大戦略ユニットの中心で、美しいフォームを繰り出す小さな人影。北玄だった！
「勝ちますよ！　しっかりと走り抜いて来たですよ！　会社のみなさん！　お世話になってるみなさん！　見ていてほしいですよ！」
後に続くランナーは見えない。圧勝だった。しかし玄の走りに妥協やおごりはない。揺るぐことなくひたすらに最大速で、最後の400メートルのトラックを一周する。
「やりました……やりましたですよー！」
玄の眼前にはいっぱいの笑顔、割れんばかりの拍手、歓声が波となって押し寄せた。右足を、左足を、踏み出す。背中の装備も、振りぬいた腕も足も、重くはなかった。胸をいっぱいに張り、勝利の証、ゴールテープを切る。

■北玄　仮装テーマ：持久走専用メカレース100点（一位）仮装70点クエスト0点合計170点

　次は、誰か。期待に目を凝らす観衆の目に飛び込んできたのは、艶やかなるギャングスタ、難波辰だった。クエスト2のうどんを残さず平らげてきてからのこのスピードは、超人的と言えるだろう。すばやく、きれいに平らげて、いただきますとごちそうさまのあいさつも欠かさなかったのは、母親の正しいしつけの賜物である。辰は礼装用の白いマフラーをなびかせて、地面を力強く蹴る。手に持っていたバラの花束は、途中で出会った美女に捧げてきたため、もうない。目覚しい速度でトラックを一周し、さわやかな笑顔とともに辰は本日二番目のゴールテープを切った。
「お疲れさまでしたですよ！　十分速かったですよ！」
「俺が一等賞や……ってええ!?　もうゴールした奴おるんかい！」
「さすがトップ集団は要求が高いねぇ！　ともあれ、二等賞！　お疲れだぜ！」
がっかりする辰に、サンマさんすかさずフォローを入れる。
（一等賞は取れへんかったけど……見ててくれたか？）
辰はこの場にいない想い人に心を寄せるのだった。