＜月華＞恋ノ紅ノ瞬キノ　―呪皇龍愛憐―｜リアクション

＜月華＞恋ノ紅ノ瞬キノ　―呪皇龍愛憐―

　＊：＊：＊

　――藍音と白虹は和解した。
　あとは、藍音の浄化を残すのみである。

　精神的に消耗が激しい陽太たちだったが、彼らが言葉を重ねたが故に、呪皇は消え、ただの藍音となった。亮と骨削瓢の奮闘があったからこそ、贄姫たちは愛憐から分離した。
　そして、月たちの善戦があったからこそ……呪皇龍は逆鱗を残して消えたのだ。

（だけど、まだ残っているんだよぃ）
　瓢はくふっ、と笑う。
　彼の中には、何体もの贄姫たちが入り込んでいる。彼女達の過去が、瓢の脳裏をよぎり、その苦痛さえもくすぐったくて笑えてくる。
（愛憐には程遠いが、あっしはあっしで集合体を形成した。愛憐討伐には力を貸したんだ。これ位の役得は……）
　瓢は哂う。甲高く。誰も気づいていないだろう現状に。
　彼は自分の中で力が膨らむのを、確かに感じ……ふわり、と悪戯に手を躍らせた。

　――刹那。

　黒い影を纏った爪が生え、毛並みが黒と白い縞へと変化する。
　潜む贄姫たちの嘆きが、彼に影の力を与える。

「あっしこそが、新たなる呪皇！　名乗るならばそう、『呪皇』ホネソギウ」　

「させねぇよ」
　鈍い音がした。いつのまにか亮が雷を纏った拳を瓢の脳天に叩き落していた。その一撃を受けて気絶した瓢を抱えた亮に、一部の者がサムズアップするのだった。
「贄姫を取り込んでいるのならば、浄化するしかないな」
　そういい、遥斗が瓢を抱え陣へと横たえた。

　＊：＊：＊

「それじゃあ、はじめよう！」
　瑠樹は巻物を広げ、朗々と読み上げる。自然と、月長石を天に掲げ、浄化の光を膨らませた。天狼族となった者は吠えて浄化の光を呼び込む。

（僕は、月だ。……みんなを巡りの輪に戻す、月の光、を！）

　夏夜の体から、優しい光があふれる。それは、仲間たちも同じで。
　その暖かな光は、陣の上の藍音たちを優しく包み込む。ゆるやかに立ち上り、紺碧の空へと消えていく。
「呪いそのものを、解こう。もう、祟らなくていいし、呪わなくていい」
　世界を変える力に、その奇跡を願う、と修が告げる。光の中、藍音は白虹と共に頷き、両手を広げた。光は、どんどん天へ登っていく。
「共に戦えて、誇りに思うよ」
　サキリが顔を上げると、燈耶が光の粒子となって消えていくのが見えた。サキリは僕もだよ、と１つだけ頷いた。
　帳と刹弦は、静かに一礼する。彼らもまた、光の粒子となって天に昇っていく。
　そのすべてが終わったとき、星華と瓢だけが陣に残っていた。少女は深々と一礼し、一同に告げた。

　――すべての呪いは、解かれました。
　　　贄姫も、愛憐様も、影の貴人たちも巡りに戻りました。

　その後で、瓢が頭を抱え「あっしの短い春だったねぃ」と呟いていた。

　＊：＊：＊

　こうして、月華世界を苛んでいた呪いは解かれ、世界は生まれ変わった。
　八神修の提案により顛末は公表され、贄姫などを祭る鎮魂碑が作られることが決まった。

　骨削瓢が語った贄姫たちの悲劇が纏められた『贄姫哀歌奇譚』は、物語の原作や芝居の原作に使われ、人々に読まれるようになった。
　瓢が睨んだとおりの事は小規模で起こったものの、月華世界を揺るがすまでには至らなかった。愛憐戦後、神酒ノ国と雲ノ国が中心になって意見をまとめ、月華世界のすべての国々が『贄姫廃止宣言』を行った。

　月華世界から、寝子島へ戻った冒険者達は、また日常へと還っていく。だが、月が見えるとどこどなく思い出すだろう。

　――月光満ちる世界と、そこに生きる者たちの物語を。

（終）

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

菊華です。
まずは、ガイドに登場してくださった尾鎌さんと骨削さん、まことにありがとうございます。
そして、参加してくださったみなさん、まことにありがとうございます。

結果に関しては、先にリアクションに目を通してから読んでもらえると嬉しいことです。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

長く続いておりました＜月華＞シリーズ、この『恋ノ紅ノ瞬キノ』を持ちまして本編終了と相成りました。

結果
・白虹と愛憐を和解させた
・愛憐と贄姫のつながりを絶った
・龍を雲ノ国へ進軍させなかった

以上、３つの結果に加え

・『愛憐』を『藍音』と呼び心を戻した
・浄化した貴人たちも巡りに戻した

以上、２つの結果も含め、『大成功』と相成りました。おめでとうございます。

感嘆に説明すると
・精神世界内→藍音の魂に多くの贄姫たちの魂が寄り添っている（むしろ縋っている）→贄姫をある程度減らさないと説得が難しい

という状態でした。
なので「贄姫たちと対峙する」はちょっと重要だったんです。

それと同時に「愛憐と対峙する（もしくは白虹と対峙する）」にて愛憐を藍音と呼ぶと、繋がりが切れやすくなります。
というのも『愛憐』というのは自害してしまった藍音の悲しみに惹かれた贄姫の魂たちが縋ってしまっている集合体の名前です。
ここで本来の名前である『藍音』（えーと、もう一度。あいんと読みます）と呼ぶ事で本来の彼女が顔を出す、という仕組みでした。

そして対呪皇龍について。
良く立ち向かってくれた！
今回はアクションを読んでごらんのとおりの結末に（龍は瀕死にちかいダメージを負っていたときに説得終了）。
絶妙なタイミングだったかな、と思っています。

ボーナス
PCさんが「儀式できないかな？」と提案されたことは、実を言うと大きなボーナスです。
その内容にもよりますが、アクションを読んで実に面白い上に効果的と判断しました。
祈りって、物凄く大きな力になるんだよ！！　という具合に。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

月華世界の今後については、落ち着いたら、という具合でしょう。
暫くお時間を頂きますが、グランドフィナーレシナリオを出す予定です。

さて、余談ですが浄化された貴人たちの中で唯一星華が残りました。
その理由は、グランドフィナーレシナリオで語ろうと思います。

それでは、今回は、この辺りで。
月華世界の問題にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

また縁がありましたらよろしくお願いします。
菊華　伴

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

おまけ
参加者全員へ次の物をプレゼントします。

称号：【月華世界の救い人】
取得：月長石と青い宝珠を使った勲章
　　　銀色の鱗（３枚）

個別コメントにて負傷度など書いておりますが、（大）で一週間から１０日ほどゆっくり休養すると改善します。
また、称号やアイテムを取得されている方もいます。確認してみてください。
個別あとがきで取得したアイテムは、アイテム化することで、月華や星幽塔を舞台にしたシナリオで使えます。
アイテム説明欄に、このシナリオのURLを記載してください。

↑ページトップに戻る