＜月華＞恋ノ紅ノ瞬キノ　―呪皇龍愛憐―｜リアクション

＜月華＞恋ノ紅ノ瞬キノ　―呪皇龍愛憐―

結：終わりは新たな始まりに通じる

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「藍音。君は何をしたのか、わかっているんだよね」
　白虹の言葉に、藍音は髪を揺らして頷いた。
「僕らは、もっと話さなくちゃいけなかった。そして……」
「私は、感情のままに大切なものを壊し続けていた」
　藍音は、静かにいい、目を深く閉ざした。悲しみに目が眩み、贄姫たちの無念に溶け込んで『愛憐』という存在になった。その悲しみと怒りのままに力を奮ってしまった。
「心優しい君ならば、自分の行動の愚かさに気づくはずだ、藍音」
　白虹の言葉に、藍音は静かに頷いた。
　その瞬間、世界が白に染まっていった。贄姫たちの姿が掻き消え、何もかもが白くなっていく。藍音は穏やかな顔で一同を見ていた。
「皆様のおかげで、未練を晴らすことができました。ありがとうございます」
　藍音の言葉に、全員が手ごたえを感じていた。これで、彼女を、この月華世界を救うことができる。
「いたずらに貴女が白虹や自分を傷つけなくてよかった」
　優木遥斗の言葉に、藍音は目を丸くする。色々と気遣ってくれた玄武族の若者に、彼女は静かに笑みをもって礼を述べた。
「この精神世界はどうなるのです？　そして龍は……？」
「解体、できないか？」
　椿美咲紀が首を傾げ、八神修が問いかけると藍音は静かに笑う。
「もう、始まります。皆さまは、この精神世界から地上へと戻ることになります」
　藍音がそう言った途端。その白い世界が強風に煽られ、１枚１枚が花びらとなってほどけていく。
　眼下に広がるは、白い砂漠。そして、先ほどまで龍と戦っていた面々が見えた。緩やかに、空から降る雪のような速さで、ふんわりと降り立った修たちは、どことなく空気が澄んでいるように感じた。白銀に輝く砂と、世界全体に降り注ぐ光。それが人々の祈りだと、一同はなんとなく察し、胸が熱くなった。
「まだ、終わってないよ。……藍音を、浄化しなくちゃ」
「そうだね。……という事は、世界の理も変えられるのかな？」
　夏夜（恵御納夏朝）の言葉に呉井陽太が希望を含ませた疑問を放つ。御剣刀はそれが希望ではなく現実になる手ごたえを和解した藍音と白虹の姿から感じ取っていた。

「それじゃあ、この儀式陣をつかって、藍音さんを浄化しよう！」
　麒麟族となった事で長髪となった曖浜瑠樹が、愛らしい神官服を纏って現れた。その姿に「かわいい！」と新田樹が声を上げる。
「これで、すべてが終わるのね」
尾鎌蛇那伊が感慨深そうにつぶやき、「そうね」と仙藤紫が相槌を打った。だが、最後まで気を抜かず、真剣に行おうと考えた。
「少しでもお役に立てたでしょうか？」
「めちゃくちゃ頑張ってたし、一緒に戦えて頼もしかったよ！」
常闇月が内心で首をかしげていると、志波武道が笑顔で頷く。それにサキリ・デイジーカッターも同意する。
「燈耶、君もそう思うだろう？」
　と、振り返ったその時。燈耶は片足が消えてよろめいていた。サキリが慌てて肩を貸して支えると、燈耶は申し訳なさそうに笑った。
「もしかしたら、体がもたなくなっているのか？　もしかしたら帳や刹弦、星華もか？」
新田亮の問いかけに、戻ってきた帳は悲しげに頷く。一同は顔を見合わせ……共に浄化をかけよう、という事になった。

「あ、そうそう。言い忘れてた！」
　と、武道。彼は精神世界から戻ってきた面々に笑顔を向けた。