MY LITTLE LADY｜リアクション

MY LITTLE LADY

■八神修さまへ宛てたお手紙

　ごきげんよう、出資者様。あなたのことをなんとお呼びすればいいでしょう。
　私個人への援助をなさったくらいですから、きっと私を見たことがある方でしょうね。
　孤児院からそう遠くへ出たことはありませんし、恥ずかしながら本の虫で図書館と孤児院の往復くらいしかしてきませんでしたから、きっとその中のどこかで、私とお会いしたのでしょうか。
　あなたは誰？
　学校の制服よりも、寮の部屋よりも、そして進学校の門を潜る栄誉よりも先にあなたがプレゼントしてくれたクイズを……
　きっとあなたからは明かさないであろうこの秘密を、わたしは口に入れたキャンディのように大事に、ゆっくりと溶かすことにします。

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　ごきげんよう、謎めいた出資者様。
　国内の実業家を調べ、雑誌社の調べた納税者ランキングを見ましたけれど、有力な情報にはなりませんでした。
　市内に限ったとしても、私個人を進学校に通わせるほどの資金的余裕をもった方は数え切れないほどいらっしゃいます。
　けれどまだ諦めたわけではありません。
　そのなかにあなたはいるのですね。
　きっとこのクイズを解いて、あなたに会いに行ってみせますから。

　ＰＳ
　学校の図書館は飽きません

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　ごきげんよう、謎めいた出資者様。
　あなたに会うための方法を、規模の大きな順に考えてみました。
　第一。全人類と握手をする。このうちの一人があなたということになります。
　第二。この手紙の行き先を追いかけてあなたへたどり着く。
　第三。同じく孤児の援助を手広く行なうことで仲介業者をフックにあなたへたどり着く。
　けれどどれも、決して上品な回答とは言えませんね。
　あなたは上品で学のある手紙を送ることを条件にしました。
　きっとこれが、回答へのヒントなのです。
　であると同時に、あなたが私に託した願いでもあるはず。

　ＰＳ
　学校の先生はとても博識でした

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　ごきげんよう、出資者様。
　もうじき私は卒業しますけれど、学校を卒業したら義務として送る手紙は最後になってしまうでしょうか。
　その後もずっと手紙を送り続けるつもりですけれど。
　けれど。
　直接顔を見て、あなたと握手がしたい。
　そう考えました。
　私とあなたを繋ぐファクターをもとに、印象と情報を人づてにたどっていけば、必ずあなたに行き着くこと。
　そしてそれが可能なだけの気品と立場を、私が獲得したこと。
　それがきっと、あなたに出会う条件。

　ＰＳ
　来月、桜の花が咲く頃に、あなたのお家へ伺います。
　手作りのクッキーと、あなたが一番最初に私へくれたプレゼントを持って。

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