MY LITTLE LADY｜リアクション

MY LITTLE LADY

■天神平庵さまへ宛てたお手紙

　ごきげんよう。名前の知らないあなた。
　この手紙はあなたに届いていますか？
　私の名前はアンジェ。今日から日本の外国人学校に通うことになりました。
　あなたのおかげで、綺麗な制服や鞄や、寮の部屋が与えられたと聞きました。
　孤児院のおばさんはあまり多くを話してくれなかったのですけれど、あなたはとてもお金持ちだと、そう聞いています。

　お手紙を書くことが援助の条件だなんて、とても変わっていますね？
　私、字だけは綺麗なつもりですけれど、ちゃんと気に入る手紙が書けるのか、とっても心配です。

　ＰＳ
　本当に、なぜ私なんかを？

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　学のあるお手紙って何かしら。
　今日はずっと、そんなことを考えていました。
　お友達は、授業で習ったことを書くのはどうかと言うのですけれど、私は少し違う気がしています。
　だから、私は、私が気づいたことを書いていきますね。

　ＰＳ
　本当にこんなお手紙で、あなたが気に入ってくれるかしら。

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　人はなぜ生きているんだろうって、考えたことはありますか？
　どうやって生きているかも、どうして呼吸ができるのかも、学校で習ったけれど、なぜそれをしようとしたのかは、まだ分かりません。
　けれど一つだけ気づいたことはありました。
　私がどう思っているかにかかわらず、私を生かそうとする人が確かにいること。
　その一人がきっと、まだ見ぬあなただということ。

　ＰＳ
　本当に本当に、なぜ私だったのでしょう。私よりずっと頭のいい子はいっぱい居たのに。

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　不幸ってなにかしら。
　買ったばかりのチョコレートを落としてしまうこと？
　転んで怪我をしてしまうこと？
　両方が私の身に起きたとき、私はすこしだけ気づきました。
　もしかしたら、それを気にかけてくれる誰かがいないこと、なのかも。
　私は転んで怪我をしてチョコレートも落としてしまったけれど、そんな私を気にかけるお友達がいました。
　これってとても、幸せなことだったんじゃないかな、って。
　そしてこの場所をくれたあなたが、この幸せをくれたんじゃないかな、って。

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　私たちには将来というものがあって、きっと何者かになるのだそうです。
　高校生になる方法すらまだ危ういというのに、その先のことなんて全然想像が付かないのですけれど……そこに至ってちょっとだけ気づいたことがありました。
　私は今、高校生になることや、その先のことを、自分で選択できる立場にあるんだってこと。
　それは私がはじめから持っていたものじゃなくて、あなたがくれたものだってこと。
　そして、孤児院にいた私の義兄弟姉妹たちは、同じように選択できるわけじゃないという、こと。
　だから、私は、どうすればそうなるのかは分からないのですけれど、目標だけはできました。
　私は大人になったら、きっと私のような誰かに、同じ場所をあげようと思います。
　そのためには、お金持ちにならなくっちゃ。

　ＰＳ
　お金持ちになるには、どうしたらいいのかしら？

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