動物園へ行こう！｜リアクション

動物園へ行こう！

○水族館職員、動物園で過ごす

（やっぱり動物園は広々としてますねえ）
　エリオット・Ｅ・シートンは、アーサーの弟です。
　４歳違いですが、童顔なエリオットはもっと下に見られることもままあるようです。
　動物園勤務の兄に対し、エリオットは水族館でアシカとトドのトレーナー兼飼育係をしていました。
　今日は仕事は休みですが……
「まぁ、偶にはいいですよね。動物園でゆったりしておこうかなって」
　休みなのに動物を見に来るのが落ち着くエリオットなのでした。
　年季が入ってちょっとボロい動物園も、エリオットにとっては思い出深い場所なのです。

「この辺からかな。猛獣エリアは人だかりが出来て大変そうですけどね」
　まずは、草食獣エリア。シマウマやレイヨウもいる混合エリアです。
　人も少なくのんびりと見て回れそうです。
　風に乗って流れてくる動物園の独特の匂いを感じながら、キリンを見ます。　
「とりあえず、キリンさんはものすごい首が長いです。可愛いけど、生きるのに大変そうだと思うんだよね」
　何度も見ている動物たちですが、飽きるということはないのでした。
　ふと鳥類エリアのほうを見れば、三つ編みの可愛い少女がいました。
（あの子、鳥と仲良しみたいですね。まるで話ができるみたいだ）
　楽しそうに鳥と話しているように見えて、エリオットは微笑みました。
（おそらく相当通っているんでしょうね）　
　動物好き同士気が合いそうな気がしましたが、エリオットは話しかけたりはしません。
　性格的に臆病で、人間に話しかけるのがめんどくさいというのもありますが。
　動物たちと共に過ごす穏やかな時間を邪魔したくないと思ったのです。

　それから、アルパカのところへ行きます。
「もふもふしてあたたかそうです」
「フーンフーン」
　返事をするように、白い毛並みのアルパカが鳴きました。
「そういえば前にアルパカが逃げたって話題になりましたね。どの子でしょうか」
　
　しばらくアルパカを眺めた後、エリオットはサル山に向かいました。
　サル山はいつもより静かで、サルたちは退屈そうにしています。
　何の気なしにエリオットが立ったのは、サルたちに向けてのパフォーマンス用にチョークの線が引かれた場所でした。
「まぁ、猿は山に行けば野性がいますから、人気も少ないのは確かですし」
　サルたちの視線を浴びながらエリオットはつぶやきます。
「まぁ、猿は去る……ってところで」
　バチコーン☆
　ダジャレが御気に召さなかったのか、もれいびのボス猿パンチは殴りつけるような仕草をしました。
「ぐはぁっ！」
　空気砲を受けたようにエリオットの体が吹っ飛びます。
　危険のないようにマットが引かれている場所まで飛んで、エリオットは尻もちをついたのでした。
「あいたた、そのためのマットでしたか」
　ひとではありますが、エリオットはろっこんのこともなんとなく知っています。
　さして驚くこともなく次へ向かうのでした。

「あ、カワウソさんがいる」
　次に向かったのは水辺エリアです。
（水族館にもいるのです、この子たちは）
　いつも見ているからこそ、動物園の子はどうなのかが気になります。
「元気そうですね、良かったです」
　他にも色々と見て歩き、シロクマのところにやってきました。
「この子たちは大変なんですよね。うちのところにいる大半のペンギンたちと同じく、暑さに弱いですからね」

「おっと、猛獣エリアか。確実なのは、オオカミ舎には行かないってところですよ。兄さんと遭遇しますし……あ」　
　当の本人が、こちらを見ていました。
「おんや？　……今日は休みかな」
「ホワイトタイガー見に来たわけではないんですけどね。休みでしたから、えぇ」
「とりあえず、ホワイトタイガーの名前募集していますよ」
「じゃあ、考えておきます」
　他人行儀にも見えますが、決して仲が悪いわけではない二人です。

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