動物園へ行こう！｜リアクション

動物園へ行こう！

○飼育員と常連さん

「ホワイトタイガーが来るとは思ってませんでしたよ」
　つぶやいたのは、アーサー・Ｔ・シートン。
　白い作業服に帽子、眼鏡をかけた柔和な青年である彼は、食肉目に詳しい獣医にして、またたび動物園の猛獣エリアの担当飼育員です。
　お客さんにはレジャースポットである動物園も、彼にとってはいつもの職場。
　本来はオオカミ舎担当ですが、ホワイトタイガーの赤ちゃん出生で獣医として駆り出され大忙しでした。
「猿山に関しては、皆さんがなんとかしてくれそうな気はしますけどね」
　かつて五月病騒動のとき皆が手助けしてくれたことを思い出すアーサーです。
（ホワイトタイガーの公開時間まで、周りの猛獣たちも見守っておきたいところです）
　アーサーは猛獣たちに声をかけて回るのでした。

「今日も皆さんに会いに行きましょう」
　御巫時子は、動物園の常連です。
　いつも最初に鳥さんエリアに行く時子ですが。
「ホワイトタイガーの赤ちゃん観覧の整理券はこちらです！」
「整理券……ですか？　そういえば赤ちゃんが公開されるのでしたね」
　思い出した時子は、幸いまだ列ができていなかったので整理券を受け取りました。
「１１時……後で見に行ってみましょう」
　
　時子は予定通り草食動物・鳥類エリアに向かいました。
　他のお客さんの邪魔にならないように、早い時間に誰も居ない時を見計らって行きます。
　鮮やかなコンゴウインコや片足を上げたフラミンゴ、様々な鳥たちが時子を待っていました。
「おはようございます。お元気ですか……？」
　ろっこん『鳥の囀り』を発動出せ、他のお客さんが来るまで鳥たちと会話を楽しむのが時子のいつもの習慣でした。
（おはよう）（トキコだー♪）（おはよう）（おはよう）（元気だよ～）
　一斉に鳥たちが返事を返します。
「お元気でよかったです」
　鳥たちの話に頷く時子です。
　しばらく時子は鳥たちと楽しく話し込みました。
「やっぱりお客さんは猛獣エリアのほうへ行かれるのですか」

　それでも何人かこちらへやってくるお客もいました。
「それじゃ、また来ますね」
　そっと囁き、時子は鳥エリアを後にするのでした。

　白熊のところへ向かったアーサーは、白熊親子に話しかけていました。
「あ、グリフ、ヒース、今日も元気ですよね。君たちは、夏は大変だと思いますけどね」
（白熊舎のクーラーが壊れた時は、怒った母熊のグリフが飼育係をゆさゆさ揺さぶって大変でしたっけ）
　アーサーは去年の夏のことを思い出しました。
　今日は普段通り大人しい二匹です。
　そこへ時子がやってきました。
「ヒースさん達もお元気そうでなによりです」
（白熊さんたちが夏バテしてたあの日から、鳥さんエリアの次にヒースさん達に会いに来るようになったんでした）
　そんなことを思っていた時子に、
「こんにちは。よく来てくださってますね」
　アーサーが声をかけました。
「はい。年間パスポートを持ってますので。白熊さんたちにはいつも会いに来ます」
「それはありがとうございます」
「冬は特に元気そうでしたね。ヒースさんも少し大きくなってるので触れ合えないのが残念ですが声に反応してくれたら嬉しいです」
「そうですね。ホワイトタイガーの子供たちもおかげさまで人気ですが、まぁ、あの子たちも、長い目で見てもらいたいところです」
　アーサーはそう語るのでした。

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