【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■プールサイドで捕まえて
（……だるい……）
　千種智也の表情に明らかに陰りが見え始める。
　噴水広場で紹介された女子はいたく智也のことを気に入ってしまったようで。
「ねぇ、智ぴー！ナイトプール行ってみようよぅ！すっごくお洒落らしいよー！」
「へー、そうなんだ。楽しみだなっ」
　ノリ良く、元気な表情を浮かべナイトプールに来た智也。
（……げ、ここも人多いな……）
　祭りだし仕方ねぇか……などと智也は思うも、隣の女性はその華やかさに瞳をキラキラと輝かせており。
「あ、あそこのベンチ空いてるみたいだ。座ろうか」
　智也のエスコートに満足げな表情を見せる女子。
　女性を楽します術は心得ている。
　智也は当たり障りのない、しかしノリの良い会話を繰り広げ、また女性を魅了する瞳で隣の相手を見つめる。
　しかし、その心の内は
（……だるい……帰りたい）
　一色だった。　

　そんな智也の姿を見つけた少年がいた。
（……あれ、千種だ）
　ロベルト・エメリヤノフがナイトプールの方に足を延ばした所。
　その瞳に、元・ルームメイトである智也の姿が映った。
（一人……じゃないか。女の子と一緒にいる）
　別れた彼女との再会、などそんな感動的な場面ではなさそうだ。
　遠目に、その光景を眺めるロベルト。

（……ん？）
　智也の視界に、紫色の髪が見え。そしてその美少年が此方をジィッと見つめていた。
（……ロベルト）
　アシンメトリーな毛先を持つ彼の姿を認め
（相変わらずの格好だな。やめろっつってんのに……）
　だが、智也は思いついた。
（いや、こいつを使うか）
　そう思い、隣にいた女性に笑みを返す。
「ごめんね。大ッッ事な友人を見つけちゃって！」
　明らかに不服そうな表情となる彼女を置いて、智也は立ち上がった。
　そして紫髪の少年の元へと近づきながら声をかける。
「ロベルト！」
　明らかに、ロベルトの眼差しは智也を向いている。しかしその表情は限りなく無表情で。
「……おい、ロベルト」
　目の前に現れても尚、無視を決め込む。智也はそこで気がついた。
「……スカラムーシュ」
「……何？」
　ようやくの反応に智也は苦笑し。
「こんな名前で呼ばせるのやめろよ……」
「いいところだったんじゃないの？」
　ロベルトが顎をクイと上げ、彼女の方を指せば。
「……いーんだよ、別に」
　彼女の方はと言えば、智也が声をかけたロベルトの姿に敵わないと思ったのか、そっと席を外す。
「行っちゃったみたいだよ」
「あっそ。ならよかった」
　ふぅん、と気のない返事をするロベルト。相変わらずだ、と智也は笑みを浮かべ。
「他の奴と過ごすよりは……いいかもな」
「何、それ」
　ロベルトの隣に座り込み。グラスを傾ける智也をジィッと見つめるロベルトであった。
（ホント、わかんない）　

　幸せにダンスを楽しんだ後、初瀬川理緒と佐和崎紗月はプールサイドへとやってきた。
　様々な美味しい食べ物にドリンク。二人はゆったりとデートを楽しむ。
「ねぇ、夏にこのナイトプールが開放されたら、二人で来れたらいいね」
　理緒の言葉に紗月も頷く、
（そしたらどんな水着にしよっかなぁ。こないだ撮影で来た水着、めっちゃ可愛かったんだよねー）
　などと理緒が思い浮かべていると。
「でも、理緒ちゃん。偏差値30からの大学受験って大変だよ？ ……大丈夫？」
　一気に現実世界に引き戻された理緒。
　事務所によるチャレンジ企画で大学受験に挑むことになってしまったのだ。
「元々は大学行かないつもりだったのに……」
　どんどん頭が重たくなってくる紗月。
「大丈夫、一緒に頑張ろう。ね」
　柔らかな紗月の言葉に
「紗月ー助けてーーー！」
　思わずムギュッとハグする理緒。
　しばし、プールサイドでじゃれ合う恋人たちだった。