【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■そして、祭りの当日
　星ヶ丘寮の祭が始まった。
　開門と同時に沢山の人々が星ヶ丘寮内に足を踏み入れ、優雅な雰囲気に身を包んでいるその頃。

　音海なぎさは祭の当日もまだ、自室で眉間に皺を寄せていた。
　星ヶ丘寮生として、自分に何が出来るだろう。
（ボクが、この催しを楽しむ人達に、もっと楽しみを配るには）
　悩まし気な色を見せるなぎさのマリンブルーの瞳。
　そんな彼の耳に、ふと柔らかな音の波が届いた。
　悩んでいた気持ちを和らげるような、明るく柔らかなフルートの音色。高貴で軽やかなヴァイオリンの響き。
　その音を聞けば、心が弾んでくるのがわかる。
（美しく、優雅な音色……そうだ）
　心地よい音色に、なぎさはステップを踏む。
（ボクに出来ること……舞踏、かな）
　部屋の中で、聞こえてくる音楽で優雅にステップを踏めば。
（芸術センスは専門に比べて少ないかもしれないけれど……でも、まだボクにやれることはあるよね）
　なぎさのマリンブルーの瞳が輝きを取り戻し。
（そうと決まれば！）
　部屋のクローゼットを大きく開くけば、並ぶのは華やかな衣装の数々。
　男性用も、女性用も色とりどりに揃えてあり。
（ダンスを披露するのだから、ナギのほうがきっと楽しくなれるよね！）
　なぎさは女性用のドレスを物色する。
（今日みたいな日は……やっぱり青の基調のドレスがいいね。きっと。きっと）
　胸の中がワクワクで満ちるのを感じながら、なぎさはお気に入りのドレスへと着替えるのだった。

（着替えたら、ちゃんとおまじない！）
　鏡に向かって愛らしく笑んだ後、なぎさがクルッと一回転すれば青色のドレスのスカートが翻り。
　仕上げに丸眼鏡を着用すれば、そこにいるのは音海なぎさではなく『ナギ・サイレントオーシャン』
「さぁ、噴水広場に出掛けよう！」
　意気揚々と広場へ向かおうとするナギだったが。
（あ、今回は仮面舞踏会だった！）
　眼鏡姿のままじゃマズイかな、と再度クローゼットを見れば愛らしい羽根飾りを発見！
「これでＯＫ！ ……かな？」
　丸眼鏡に華やかな羽飾りをつけ、なぎさはナギとして軽やかに外へと出て行った。

「……マスカレードォ……？」
　曖浜瑠樹は愛らしく小首を傾げた。
　寝子島が誇る三寮の祭り。各寮をめぐる瑠樹であったが、彼にとって『マスカレード』とは聞き慣れない言葉であり。
（何かよくわからないけれど、星ヶ丘寮のお祭りなら、きっと面白いお祭りになるよねぇ）
　瑠樹は元気いっぱいに
「よぉーし、楽しむよぉー！」
　とエントランスへ向かう瑠樹だった。

　瑠樹が到着すれば、早速寮生によるおもてなしを受け。
「ようこそ、星ヶ丘寮へ」
「うわー、本物の魔法使いさん！？」
　出迎えたのは、旅鴉月詠。
　普段は下ろしている髪、ツーサイドアップに整えてあり、その毛先はゆる～く巻かれている。
　また、服装は英国の魔法使いを思わせ、気品と妖しさも垣間見えるもの。
　本格的な衣服に瑠樹は目を丸くした。
「ここではお好みの衣装や仮面を用意することが出来る。着てみたいものなどあるだろうか」
　月詠の問いに、瑠樹は眉間に皺を寄せ、ムムゥ、と考える。そして
「あ！ふわふわの着ぐるみとか可愛いのあるかなぁ？」
「……ほう、着ぐるみか」
　そう言うと、月詠はあたかも魔術書のように、分厚い衣装カタログを取り出した。
　ペラペラッとめくれば、愛らしい着ぐるみページが。ちゃんとキッズ用の用意もある。
「さぁ、好きなものを選ぶといい」
「わぁ……なやむよぉ！」
　しばしあれやこれやページを捲り、戻した結果。
「それじゃあ、これにする！」
　瑠樹が選んだのは愛らしい猫の着ぐるみ。
　仮面をつけ、腰にはサーベルが差さっており。まるで三銃士のような印象を受ける猫着ぐるみだ。
「わかった、用意しよう」
　月詠がパチンッ！と指を鳴らせば、星ヶ丘寮の執事たちが着ぐるみを持って瑠樹たちの目の前に現れ。
「おねーさん、本当に魔女みたいだなぁ」
　朗らかに笑う瑠樹だった。