【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■王子と姫の舞踏会
　噴水広場に一人のプリンスが誕生していた。
　179cmという高身長に、穏やかな笑みを称え。タキシード姿が様になっているのは如月蘇芳。
　彼の赤い瞳は温厚な色を持ち、さながら童話の世界の王子様が仮面舞踏会に現れたかのようで、周りの女性たちの視線を一身に集めている。
（あまりこういうお祭り事には参加しないけれど……新鮮だね）
　白地に赤のラインが入った仮面姿で辺りを見回し
（さて、誰をダンスに誘おうかな？）
　そう思いつつ、ゆっくりと歩けば、いくらかの女性が進み出て、蘇芳へと声をかける。
「あ、あの、私と踊っていただけませんか？」
　仮面を付けていてもわかる、きっと愛らしいだろう雰囲気の少女に蘇芳は頷いた。
「あぁ、ありがとう。ぜひ、踊ろう」
　優雅に少女の手を取る蘇芳。
　他の女性からの羨望の眼差しを受け、蘇芳と少女は優雅にダンスを楽しむ。
　一曲が終われば、見計らったように蘇芳へと更なる申し出。
　そしてもう一曲が終われば、新たな女性のお誘い。
（流石にキリがないな）
　他にも、蘇芳の手が空かないものかと待ち構える女性の姿がチラホラ見えた。
　が、そんな彼の赤い瞳に、一人の少女がキョロキョロと辺りを見回しているのが映った。
　今まで踊った少女たち以上に、愛らしい雰囲気と、どこか庇護したくなる儚さを兼ね備えた美少女。
（……おや、あの子はまだお相手がいないのかな？せっかくだし……）
　蘇芳は次なる女性の申し出を断り、愛らしいドレス姿の姫君の元へ進み出た。
「…俺と、踊りませんか？」
　笑みを称え、蘇芳が姫君のしなやかな手を取る。
　王子が初めて自分からダンスパートナーを見つけたこと、またそれがお似合いと感じる程のプリンセスっぷりに、蘇芳に断られた女性すら納得の表情を浮かべる。
　さて、当のプリンセスは、と言うと。
（仮面をしてても因の可愛さに気づいてくれる人、いましたぁ♪）
　愛らしい眼差しを、花で彩った仮面の中から送る姫君、天宮城因。
　取られた手を握りしめ、優雅にダンスに入ろうとした直後、因は気付いた。
「……こんばんはぁ、すおーさん？」
「……げ。……その声、因君？」
　唇の端をニッコリと上げ、因が微笑む。が、仮面の奥に見えるピンクの瞳は笑みが見えないどころか冷めきっている。
（最悪だ……目でも腐ったのかな、因君だと気付かなかっただなんて……！）
　なんて日だ！！と脳内で叫びたくなる程に蘇芳の精神的ダメージは大きく、深い。
　傍目から見れば、それはそれは理想のプリンスとプリンセス！という空気が漂う蘇芳と因。
「……ちょっと、すおーさんに手を取られるなんて真っ平ごめんなんですけどぉ」
　手を離そうとする因だった。が、蘇芳は周りからの視線を感じ、逃げ出しそうな因の手をクイッと引く。
「雰囲気を壊すわけにもいかない」
　他の女性の誘いを断ってまで誘った相手にフラれるとなったら、蘇芳のプライドはズタズタになるであろう。そんな思いは胸の中に隠し。
「……仕方ないですねぇ」
　因の耳元で小声で囁く蘇芳に、因は息をつく。
「やーーーっと因の可愛さに気付いたって言うんなら許してあげてもいいですよぉ？」
　軽やかかつ優雅にステップを踏みながら、嘲るような瞳と声色を響かせる因に。
「ブサイクな因君と踊りたかったわけじゃないんだけど。一人誰にも誘われていない可ッ哀想な因君を誘ってあげたんだから、むしろ感謝してもらわないと」
　蘇芳が笑みを浮かべる。
　まさかダンス中でこんな会話が繰り広げられてるとは露知らず。
　周りの観客からは完璧かつ優雅なステップを楽しそうに踏む２人に憧れの視線を注いでいる。
「……因をブサイクだなんて……ッ！やぁぁぁっぱり、すおーさんはお目目が腐っちゃってるんですかねぇ？」
　マスク越しに蘇芳の赤い瞳を覗き込む因。顔を近づけた因の姿に、観客は口づけでも交わすのか、と息が止まる。
「それとも、頭の方ですかぁ？」
　近づけて顔を離す因は、周りからは王子様を焦らす可愛らしいお姫様にしか見えてないだろう。
「頭が湧いているのは、そんな恰好をしてる因君の方だと思うんだけどね」
　そう言うと、蘇芳はくるぅりと優雅に因をターンさせる。
「まぁいいや。下手くそなダンスで俺の足を引っ張らないでよね」
「そっちこそですよぉ、すおーさん」
　曲の盛り上がりに合わせ、激しくステップを踏む因。
「あまりに下手すぎるとフォローしきれないから」

　２人のステップは毒舌と共に、更に優雅さと情熱を増していくのだった。

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【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

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