【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■麗しのプールサイド
　一人の美麗な紳士が星ヶ丘寮をゆっくりと散策していた。
　艶やかな黒髪はオールバックに撫でつけられ、シンプルでシックなスーツに身を包み、その目元は妖しくも美しいヴェネチアンマスクで飾られている。
　引き締まった筋肉質の体躯、凛とした佇まい。
　仄かに笑みを浮かべ闊歩する姿は、常日頃から高貴な生活を嗜む良家の子息としか思えぬ程。
　女性の熱い眼差しを受けてもクールな笑みを返すその青年は、内心、思う。
（うっわ！今のすれ違った人、すっごいドレス！重たくないのかな……わー、それにしてもやっぱ星ヶ丘寮は凄い、凄くないコレ！？高級すぎるにも程があるデショ！）
　クールな佇まいとは裏腹に、胸の内はワクワクズッキュン☆ な我らが寝子島高校・現生徒会長の志波武道その人である。
　楽しそうだから、来ちゃった☆ てへぺろ！な内心ではあるが、そんな感情は表に出さず。落ち着いた物腰で星ヶ丘寮内を散策中なわけで。

（さて、どこを回るかな……）
　そう言えば、とふと思い出す。星ヶ丘寮を知る友人の話に寄れば、寮内にいくつかのプールがあることを。
（スイマーとしては気になるな！）
　水泳部に所属する身としては、高級な街の如き星ヶ丘寮にはどんなプールがあるのか興味津々☆
（カワウソいないかな～）
　なぁんてことをほっこりと想像しながら、武道は美しい姿勢を保ったまま、プールへと向かって行くのだった。

（これがプール……！！スゴクナイっ！？）
　ちょっとしたアミューズメント施設のプールなど目じゃない程の広さを持ち、また美しく整備されたプールに武道は思わず目を開いた。
　まだ時期が早いゆえに泳ぐことは難しそうだが、水辺にいることで落ち着きを得られそうだと思う。
　執事から紅茶のサービスを受け、軽食としてサンドイッチを受け取る。
　それを上品に頬張れば
（美味しい……ッ！！！）
　素材の良さは元より、ハーブを使って絶妙な味付けに武道は感銘を受ける。
　が、今日の武道は紳士である。美味しさを称える自然に感激は胸へと秘め、その味をじっくりと味わう。
　そんな普段の印象と違う武道ではあった、が。
「……あら？もしかして……武道ちゃん？」
　軽やかな声が武道へと降り注いだ。
　目の前には明るい茶色の髪を下ろし、優美な笑みを浮かべた女性……にも見えうる、男性。
　これまでまだ誰にも武道であることを指摘されていなかったが、この呼び方には覚えがある。
「……もしかして、恩くん？」
「当たりよぉ♪」
　同じ寝子島高校３年生である武道、そして早坂恩。
　女性的感覚も備え、メイクや衣装に興味がある恩だからこそ、普段と雰囲気と違う武道を見つけられたのだろう。
「せっかくだから、お隣良いかしら？」
「もっちろん！」
　先程までのクールな雰囲気はどこへやら、武道は恩にいつものノリでニパッと笑う。
「……ふふ、口を開くのとそうでないのとじゃ、印象が変わるわねぇ」
「そっかなー☆」
　しばし、お互いに紅茶や軽食を楽しみながら談笑し。
　凛々しい青年と、女性的な美しさを兼ね備えた中性的な恩、プールサイドで一際麗しい空間を作り出していたのは言うまでもない。