【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■薔薇の楽園
　今回、星ヶ丘寮のお部屋開放されている部屋の中で、人気スポットの一つとなったのは緋紅朱赫乃が丹念に世話をする薔薇園だろう。
　薔薇が美しく咲き誇るこの季節。
　会場の装飾にもふんだんに使用された薔薇たちはとても美しく、気高い香りで星ヶ丘寮を彩っていた。
　その彩りに感動した人々が、赫乃の薔薇園にも多数訪れる。
「ようこそ、私の薔薇園、へ」
　カーテシーと呼ばれるヨーロッパ式の挨拶で出迎える赫乃は愛らしい薔薇の妖精に見える程。
「ゆっくり、薔薇を、見て、楽しんでください、ね」
　はにかむような笑みを見せる。
　普段は人見知りで恥ずかしがり屋、人前に出るどころか物陰に隠れる赫乃ではあるが、今日はおもてなしをするために、緊張しつつも来場する人々に対し、懸命に笑みを浮かべていた。
　赫乃にとって、育てた薔薇に顔を綻ばせ、感動する来寮者の表情を見られるのは嬉しい事でもあり。
（一般公開、してみて……よかった……）
　愛らしいマスクの下の眼差しが和らぐ。
　一般の来寮者が感激するのは勿論のこと
「もしかして、これは……！」
　薔薇に詳しい者ほど、赫乃の薔薇園に驚かされるわけで。
「何故、この薔薇がここに……！？」
　思わず赫乃に尋ねれば
「それ、は……実家の、お母さんが作った、鉢、です」
　赫乃の母親は、その界隈では著名な薔薇の生産者である。
「もしかして、緋紅朱さんか！？」
「は、はい……」
「いやぁ、まさかここで緋紅朱さんの薔薇が見られるとはなぁ。しかも素晴らしく美しく育てているんだね」
「あ、ありがとう、ござい、ます」
　幸せそうに薔薇に見入る客人に、そっと笑む赫乃だった。
「他にも、あるんです、よ」
　赫乃が静々と進んで行くのに着いて行く客人。
　目の前には美しくセッティングされた４つの鉢。

　大輪を咲かせる、高貴な剣のような――『緋』
　艶やかに丸みを帯びた、甘い香りの――『紅』
　黄昏のように、あるいは暁のように鮮やかな――『朱』
　たおやかでありながら力強い、輝く赤い――『赫』
　
「すべて、母の、作品……です」
「見事だ……！」
　感動する客人の姿に
（お母さんの、薔薇……とても、喜んで、貰っている、よ……）
　心の中で母へと話しかける赫乃だった。

「うわぁ、凄い綺麗だよぉ！」
　星ヶ丘寮内を歩くゆるふわだんしゃくこと曖浜瑠樹、また一緒に同行していた新田亮も薔薇園の美しさについ足を止め。
「これは美しいな」
　亮が胸いっぱいに薔薇の香りを吸い込む。
「あの、よかった、ら……ぜひ、見ていって、ください……」
「見たいよぉ！」
　瑠樹の明るい返事を聞き、二人は赫乃の薔薇園へと足を踏み入れた。
「しかし、これだけの薔薇を手入れするのは大変だろう」
　仮面を外し、赫乃に声かける亮。
　ふるふると顔を振った後、赫乃は小さく声をだす。
「いえ……大好き、なので……大変だ、と思う事は……ありません」
　実家から持ってきた薔薇を育て楽しむことは赫乃にとって日常であり。
「そうか。それがこれだけの人を楽しませるのだから、凄いと思う。見せてくれて、ありがとう」
　亮がお辞儀をすれば、恐縮しながら赫乃も頭を下げた。
「あ、さっきの写真のお姉さんだよぉ！」
「あら、また会いましたねー、ゆるふわだんしゃくさんー！」
　そこに現れたのは星ヶ丘寮専属メイドの檜扇舞華。
　ビデオを構え、人の集まる薔薇園を撮影にやってきたようで。
「相変わらず綺麗ですねー！写真や映像だとこの香りをお届け出来ないのが悔しいですねー」
　舞華の言葉に赫乃は笑む。
「どうですか、これだけの人が薔薇を楽しんでくれてるのはっ」
　舞華にカメラを向けられれば、サササッと小動物のように亮の後ろに隠れる赫乃。
（う、嬉しく、お、思います……）
　物凄く物凄く小声で答えた赫乃、その声を聞いた亮は。
「嬉しいそうだ」
「コメントありがとうございますー！それじゃあ、薔薇園、たぁっぷり撮影させていただきますねー！」
　そう言うと軽やかに薔薇園内に入っていく舞華だった。
（少し、でも。薔薇の、花の、美しさ、が……みんな、に届きます、ように……）
　笑みが浮かぶ赫乃だった。