【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■どんなご要望にも
「仮面舞踏会と言えば、やっぱりオペラ座の怪人よねぇ」
　旧市街のねこじま荘で暮らす図書館司書、多岐川玲栖は星ヶ丘寮内でうっとりとした眼差しを浮かべていた。
（星ヶ丘寮に入ることなんてそうそうないだろうから、思う存分楽しんでいくわ！）
　拳をギュッと握り、その鮮やかな赤色の瞳は期待に輝き。
　華やかに装飾されたエントランスにて、玲栖は衣装を物色すれば。
「ねぇ、せっかくだから着たい衣装があるのだけれど」
　傍らに立つ星ヶ丘寮生、かつ男装の麗人――仲秋薫へと声をかけた。
「どんな衣装でしょう？」
「……ふふ、アタシの歌姫を迎えるに似合う衣装をお願いしたいのよねぇ」
　玲栖が細かな要望を伝えれば、薫は即座に指定のものを準備する。
　黒を基調とした華やかで中世的な衣装に、玲栖はうっとりとした眼差しを浮かべる。
「あと、あなたの着けているマスク、とてもとても素敵！って思って。似たようなものってあるかしら？」
　パールブラックで蝶をイメージした文様の入った、ホワイトのフルマスク姿の薫が、仮面の下で笑む。
「かしこまりました」
　自分の作成した仮面を褒めてもらえたことを薫は嬉しく思いつつ。薫は玲栖のために、顔の片側を隠す美しいマスクを用意するのだった。
　玲栖が衣装を着替え、薫の元に現れれば
「まさに……ファントムですね。お似合いです」
　薫の上擦った声に、玲栖も満足そうな表情を浮かべ。
「ありがと！それじゃあ、アタシの歌姫を探しに行って来るわね」
　楽しそうに、軽やかに、玲栖は歩き出すのだった。

　羽生碧南が猫鳴館の次に訪れたのは星ヶ丘寮。
（何度か星ヶ丘寮には訪れているけれど……やっぱり慣れないわね）
　桜花寮にて普通の生活を過ごす碧南にとって、星ヶ丘寮の雰囲気は圧倒されるばかりで。猫鳴館の翌日だから、余計に豪華さが際立つ。
（そう言えば、ドレスの貸し出しがあったはずだけれど……）
　星ヶ丘寮のエントランスには既に多くの人が集っていた。
「ドレスの貸し出しはこちらでーす！」
　小柄で愛らしい少女――春姫いちごがぴょんこぴょんこと跳ねながら、来場者に案内をしているのを見つける。
　チョコレート色の髪をツインテールに結い、メイド服に身を包んだ少女の姿。
（あーいう子なら豪華なドレスも似合うんだろうな）
　懸命に働く幼き少女（に見える）の姿に、碧南は笑みを浮かべた。
「あの、すみません、ドレスお借りしたいのですが」
　碧南がいちごに近づくと、いちごは碧南を見上げ嬉しそうな表情を見せた。
「あ、でも、私でも着られるのがあれば、ですがっ」
　身長180cmもあるし、なかったら男装でも良いかなぁーなんて……と明るく言う碧南に、いちごは瞳を輝かせ、首をぶんぶんと振る。
「男装なんて勿体無いですっ！お姉さんに似合いそうなドレス、わたし、いくつも浮かびましたっ！良かったら、試着しませんかっ？」
「え？あるの？」　
「勿論ですっ！！」
　力強く頷くいちごに案内され、碧南は試着室へと向かうのだった。

（流石星ヶ丘寮ね。サイズは勿論、品揃えも豊富だし……！）
　いちごの見立てにより、いくかのドレスを試着し。最終的に碧南は光沢があり、鮮やかなグリーンのロングドレスをチョイスした。
　身体にフィットし、碧南のスタイルの良さを強調している。
「わぁ、すっごく素敵です！お似合いですっ！」
　と、いちごの愛らしい表情が笑顔で輝くのを見れば、それがお世辞でなく心からの言葉だと思える。
（ちょっと、セクシーだとは思うけど……）
　ロングタイプのドレスでありながら、その胸元や背中は開き、スリットもなかなかの位置まで入っていることに気づく。　
　しかし、銀色のアイマスクを着用すれば、星ヶ丘寮の雰囲気も相まってか、少し大胆になれそうな気もするから不思議だ。
　そう思いながら、ウキウキとした気持ちで散策を始める碧南だった。