【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■それぞれのコーディネートで
　こうして、また大好きな先輩と踊れるなんて。

　卯木衛はやや緊張した面持ちで待ち合わせ場所に立っていた。
　晴れて、大好きな先輩であった壬生由貴奈と恋人同士となれた二人だが、まだ恋人ではない頃の思い出はとても多い。
　その内の一つが『卒業生を送る会』
（あの時もめっちゃめちゃ緊張したんだよな）
　たった数か月前のことなのに、その時の緊張を含め容易に思い出せる衛。
（今からドキドキすんなー！）
　お互いの気持ちを確かめ合った後でも、こうして由貴奈と会える日はとても嬉しく、胸が熱くなる。
（仮面舞踏会っつーからには、何時もとちょっと違う由貴奈さんが見られるわけで……）
　そう思うと、ふと己の格好が気になってくる。
（星ヶ丘寮の人が着せてくれたやつだし、変な格好じゃねえとは思うんだけど……どうだろ）
　白いブラウスにはフリルがふんだんにあしらわれ、胸元にはストライプのリボンが揺れる。
　小柄な衛の腰にはコルセット、またキュロットから伸びる足にはソックスガーター。
　片目を隠す羽のようなマスクもあってか、上品ながらも小悪魔的な愛らしさを感じさせる雰囲気の衛。
　星ヶ丘寮生がノリッノリで選んでくれたこの服、衛としても悪くはない、と思っていた。
　
（寮祭かぁ）
　待ち合わせ場所に向かいながら、由貴奈は星ヶ丘寮の装飾を見回した。
（高校は一人暮らしだったから、結局寮には行かなかったっけ）
　星ヶ丘の高級マンションには住んでいるが、星ヶ丘寮の内部はとても新鮮に思える。　
　機械いじりが好きな由貴奈、星ヶ丘寮を素晴らしく装飾する電飾や設備に興味深々。
（おっとぉ。待ち合わせに遅れたらうーちゃんに申し訳ないねぇ）
　設備をいじくりたい気持ちを堪え、由貴奈は衛の元へと少しだけ急ぐ。
　星ヶ丘寮の仮面舞踏会に参加するにあたり、寮で衣装を借りる人が多い中、由貴奈はせっかくのデートだし、とドレスを着用してきた。
（ちょっとだけ着合い入れてドレス着たけど……久々だなぁ、このドレス着るのは）
　深く胸元が開いた夜色のドレス。同色のミニシルクハットには鮮やかな薔薇飾り。
　歩く度に、肩のショールが柔らかに揺れる。
　そして、目元を飾る麗しいマスク。
（仮面の下は誰にも見えない。なら、いつもと少し違う振る舞いしてもいいかな？）
　仮面の下にはタレ目がちな由貴奈の眼差しは楽し気に和らぐ。
（うーちゃん、驚くかも）

　北条冬華は寝子島高校に通いつつ、桜月のモデル兼メイドを務めている。
　住んでいるのはシーサイドタウンのアパートではあるが、星ヶ丘で働く冬華にとって祭はもてなす側としての参加。
　せっかくだから、と月とも共通の友人でもある小山内海を誘ったのだった。

　当日、冬華がエントランスで海の姿を探せば、先に気付いた海が冬華へとタタタと近寄ってきた。
『さそってくれてありがとう』
　冬華に近づき、持参したスケッチブックにササッと筆を走らせる海。
「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます」
　冬華がお辞儀をすれば、ウェーブがかった肩までの白髪が柔らかに揺れ。
　そしてその動きと同じく、冬華の大きな胸元がたゆゆんと波打つのを海は見ながら
（……おっきいの、羨ましい……！）
　つい目に入ってしまう海だった。

　冬華にエスコートされ、エントランスを通り。
「こちらにあるのが月さんがデザインされたドレスですよ」
『やっぱりつきちゃんはすごいなぁ』
　海は青い瞳をキラキラと輝かせ、壮麗たるドレスの数々の中で更に個性を放つ月デザインの衣装の数々に釘付けとなった。
　絵を描く者として、やはり他の人物によるデザインはとても参考になるもので。
『ふゆかちゃんは、どれにするの？』
「そうですね……」
　冬華が艶のある唇に己の人差し指をあて、悩む。
「私はこのチャイナドレスにしようと思います。どれも素敵なデザインですが……」
　月によって、身体にフィットするようにデザインされたチャイナドレス。
　胸元は大きく開き、また肩も露出しセクシーさを醸し出している。
　しかし、それ以上に際どいのがスリットの部分。太腿が大胆に露出され、歩けば付け根まで見えてしまうのでは、と思われる程。
　だが、そんな刺激的な衣装も、冬華が着用することで
『すっごく、よく似合う！！』
　海が感想をスケッチブックに走らせる。
　開いた胸元は通常であればそこまでの存在感は出ないのかもしれないが、冬華の規格外のバストのせいか、胸元の谷間がくっきりと露出している。
『さすが、つきちゃんのデザインだね』
　うんうんと頷く海に対し、冬華は
「海さんはどのドレスにするか決まりましたか？」
　その言葉に海は一着のドレスを広げた。
　広げられたのはグラデーションがかった藍色のナイトドレス。
　オーソドックスでありながらもアシンメトリーなスカートの裾や美しく配置されたスパンコールやビジュー使いに月のデザインセンスが光っている。
「とても似合うと思います。良かったら、お手伝いしますが……」
　冬華が目尻を下げ、そっと海の身体に手をかけようとする。
（ぬ、脱がす所から！？）
　海が焦りの表情を見せるが、冬華にとっては月のいつもの着替えの手伝いの手順なわけで。
『だいじょうぶ、なにかあったらおねがいします！』

　やや頬を紅潮させた海に、不思議そうな表情を浮かべつつ頷く冬華だった。

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【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

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