【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■王子も、姫も
「うわー！すげー、お城みてえー！！」
　寝子島小学校５寝３組、源竜世。
　星ヶ丘寮の入り口の時点で既にお口あんぐり、である。
「こっちの方あんまこねーから新せんだ！」
　意気揚々とエントランスへ向かった竜世に柔らかな声がかかった。
「ちょっと、そこのボク？」
「ん？」
　振り返れば、メイド服姿の少女が竜世に熱い眼差しを送っていた。
「愛らしいボク、今日は仮面舞踏会よ」
「かめんぶとーかい？」
　小首を傾げる竜世にメイドは笑み、丁寧に竜世へと今日のイベントを説明し始めた。
「え！？このままのカッコじゃいけねえの！？」
「その格好も可愛いけれど……」
　メイドがパチンと指を鳴らせば、更に５人のメイドが出現する。
「な、なんだ……！？」
　流石に後ずさりする竜世に
「あたし達が、仮装のお手伝いしてア・ゲ・ル☆」
「なっ、何すんだーーーっっ」

　こうして竜世がもみくちゃにされている頃。
　寝子島小学校５年２組、タイラ・トラントゥールも星ヶ丘寮内へと到着した。
　星ヶ丘のパリ風アパルトマンに居住中のタイラだが、寮の中を覗くのは初めて。
（日本にいつまで滞在するかわからないが折角だ、寮を見学しておくのもいいだろう）　
　母親の里帰りの都合でこの４月から寝子島へやってきたタイラ。
　今のうちに寝子島という場所を堪能しておきたい、と思う。
　そして、星ヶ丘寮内へと足を踏み入れれば
「やっだ、超可愛いんですけど！」
　あたしコーディネートしたーい！と星ヶ丘寮メイドがタイラの姿に声を弾ませる。
「な、なんの話だ」
　そこで仮面舞踏会の説明を受けるも
「別に、ボクはこのままでも構わな……な、何をするっ！？」
「一名様、ご来場で～す！キッズサイズ用意しておいてよかったわぁぁ！！」
「やっ、やめろぉお！」
　哀れ、タイラの叫びはメイド達のキャッキャウフフ声にかき消された。
「くっ、くすぐってぇってば！」

　エントランスにて、一際愛らしい少女が唇に指を寄せ、たくさんのドレスを丹念に眺めていた。
　彼女の名前は天宮城因。
　釣り目がちでパッチリとしたピンク色の瞳はキラッキラに輝き、ツーサイドアップに結わえた髪はゴールドからピンクへとグラデーションがかり、艶やかな光沢を見せている。
「因、舞踏会なんて初めてですっ♪」
　星ヶ丘寮のゴージャスな雰囲気に負けず、お姫様のように愛らしい因。
　どこからどう見ても、プリンセスである。
　今、この場にいる星ヶ丘寮スタッフは、一人も彼女が実はプリンスだなんて思わないことだろう。
「うーん、素敵なドレスがいっぱいで、とーっても悩んじゃいます！」
　ハートがたくさん飛び散るような甘い声、そして悩まし気な表情を見せれば、星ヶ丘寮スタッフがオススメのドレスをいくつも持って近寄ってくる程。
「あっ、貴方が持ってるお花のドレスがすーーっごく、可愛いです♪」
　因のお眼鏡にかなったのはピンクの花飾りがついたプリンセスラインのドレス。
（これなら体型が隠れそう）
　鏡の前、身体にドレスをあてがいパフスリーブの袖に頷く因。
「これにしますっ」
　愛らしいドレスを手に更衣室で着替えを済ませ、外へと出ればその愛らしさにスタッフがため息をつく程。
「せっかくだから、メイクもいつもよりハデにしたいですよねぇ？」
　彼女の言葉にササッとメイク係が飛んでくるものの、因はそっと手で制す。
「メイク道具、貸して頂いてもいいでしょうかぁ？」
　上目遣いにメイク係の瞳を見つめ。
「因がイチバン可愛くなる方法は、因がイチバンわかってるのでっ☆」
　パチン☆ とウインクする因みにメロメロっと撃沈する星ヶ丘寮スタッフだった。