【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆｜リアクション

【三寮祭】星ヶ丘、マスカレード☆

■女性も、男性も、艶やかに
　エントランスを抜けると、そこは衣装の貸し出しコーナー。
　目の前に現れたドレスたちに、城山水樹は瞳を輝かせた。
「これだけあると悩んじゃうわね……」
　そう言いつつも、困ったというより嬉しそうな恋人の姿をヒュー・ヒューバートは優しい眼差しと共に見守っていた。
　そんな二人の元に、星ヶ丘寮生の旅鴉月詠がスッと現れた。
「お悩みならば、手伝いをしよう」
「あら、有難いわね。せっかくだからお願いしようかしら」
　水樹と月詠のやりとりに笑むヒューだったが、ピシッと月詠みの視線が刺さる。
「そこのパートナーも、せっかくだからコーディネートしようじゃないか。トータルコーディネートだ」
「え？僕もかい？」
「いいじゃない、ヒュー」
　二人の女性の力強い眼差しにたじたじとなるヒューだった。

　星幽塔から寝子島へと下り立ったスハイル・アルムーリフ。
　気づけば、引き寄せられるように星ヶ丘寮の前へとやってきていた。
（素敵な雰囲気ですね）
　星ヶ丘寮の豪華さにスハイルは美しい笑みを浮かべる。
　どうやら、お祭りを開催しているらしい。しかも周りの言葉を聞いていると、仮面舞踏会。
（これは好都合です。仮面とかお借りして、紛れてしまいましょう）
　スハイルは期待を胸に、優美な笑みを浮かべ星ヶ丘寮のエントランスへと向かう。

　色とりどりの衣装やドレスにスハイルは幾ばくかうっとりとした笑みを見せ。
（実に素晴らしいですね）
　元々、呪術・宗教的な舞踊を伝える遊牧民であり、踊り手として過ごしているスハイルにとって、並べられている衣装はどれも興味深い。
　カッチリとしたタキシード、ひらひらと優雅な衣装は既視感すら覚える程。
　いくらかの衣装を試着した結果、最終的にスハイルが選んだのは
（……この衣装で舞うことができたら楽しいでしょうね）
　そう思える、中性的で色気のある衣装だった。
　肩は露出し、胸元も大きく開いている。スハイルが動けばシャラリと音がなりそうな、芸術的なアクセサリーいくつも纏い、飾る。
　仕上げに、服装に見合うマスク物色し。優美さと妖しさを絶妙に混ぜ合わせたスハイルの金色の瞳を覆えば。
（こんなもの、でしょうか）
　姿見で己の姿を確認すれば、踊るように軽やかに星ヶ丘寮内を散策し始めるのだった。

「あら、素敵じゃない、ヒュー」
　熱い眼差しでヒューを見つめる水樹。
　月詠のコーディネートにより中世の貴族の如き服装に整えられたヒュー。元々の容姿の良さもあってか、本物の貴族のように見える。
（僕の姿なんかより……）
　ドレスアップした水樹の姿に言葉を失うヒュー。
　いつもは下ろしている髪をアップにし、背中が大胆に開いた妖艶なドレス姿の水樹。
　モデルとして様々な衣装を着ている水樹だが、流石星ヶ丘、用意している衣服の質は段違いで。
　水樹の周りに居る者たちまでが、水樹の美貌に足を止める程。
　そんな観衆の視線を集める水樹をプロデュースできたことに月詠も満足そうな笑みを浮かべる。
「……そうだ。私の部屋は休憩所として開放してある。よかったら見学するといい」
「そうなんだね。ぜひお邪魔させていただくよ」
　ヒューが紳士的な笑みを浮かべ、優雅に頭を下げ。
「いってらっしゃいませ、シンデレラ。そして王子様」
　月詠にお礼を言い、水樹とヒューは肩を組み寮内を進む。
「……魔法は勝手に解けないから、ごゆっくり堪能したまえ」
　そんな二人の背中に、月詠はそっと呟いた。