world wide civilize｜リアクション

world wide civilize

■蒼穹
　惑星コズエは弱者たちの星でした。
　強い生命に虐げられ、それを克服するために技術を身につけ、その技術によって互いに争うようになり、自滅を察して世界の拡張を求めました。
　その結果たどりついたのが宇宙開発でした。

　惑星をひとつダメにしてしまえるほどの科学技術は、宇宙へ旅立つにも有効でした。
　未だお互いが覇権を狙い合っているなか、それでも夢を持った人々によって宇宙開発は進められていきます。
　衛星への着陸を果たした者。
　きわめて小さいコストで惑星探査を成功させた者。
　そんな栄光の影にある、無数の失敗。
　しかし彼らは、夢を諦めませんでした。
　なぜならそれこそが、この惑星の民が発展してきた理由だったからです。

　惑星コズエの民は夢をもち、愛をもっていました。
　強い生命に虐げられている時も、それに打ち勝つ夢を持ち、互いを守る愛をもっていました。
　技術による争いが起きたときも、それが終わる日を夢見て、愛による平和を望む声が大きくなりました。
　そんな夢と愛は、宇宙という広い空間へ向けられました。
　だから、宇宙の彼方から銀色の円盤が飛来した時も、まずは握手から始めることにしたのです。

　宇宙から来た彼らは、宇宙人と呼ばれました。
　カエル、カラス、イルカ、サル、ウサギ……そんな動物が人間の形に進化したかのような生物を、自分たちと同じ知的生命体だと考えるには、一枚のフィルターを通す必要があったのです。
　惑星コズエは知的生命体の少ない星でした。
　というより、言語や道具による社会形成を行なえる生物はずっとずっと昔に人類種ひとつ限りとなっていたのです。
　地球で例えると、ネアンデルタール人とホモサピエンスがそのまま互いを滅ぼさずに進化した場合、人類も二種類に分かれていたかもしれない……という仮説に近いお話です。余談ですが、ネアンデルタール人は言語体系を作らず歌によるコミュニケーションをとっていたと言われています。それゆえ社会規模を複雑化できずに滅びたともいわれているとかいないとか。
　一応、宇宙人たちは一輪ずつ機械化した花を身につけており、これによって同時通訳が可能でした。言語ではなく価値観や意図をそのまま脳に送り込むシステムによって、すれ違いは回避されたのです。

　とはいえ、地球人は保守的でした。
　なぜなら古来より彼らはずっと何かに脅かされてきたからです。
　宇宙人というきわめて高度な文明を持った巨大複合コミュニティに、惑星コズエが一呑みにされてしまう恐怖を、感じずにはいられなかったのでしょう。
　社会全体がすぐに相容れることはできませんでしたが、宇宙人とコズエ星人類の交流は細々と行なわれました。
　ある日、までは。

このページにイラストを設定する