【星幽塔】第十三階層　『おもちゃのおしろ』と「こびと」の少年｜リアクション

【星幽塔】第十三階層　『おもちゃのおしろ』と「こびと」の少年

【？？？】

　薄暗い隠し通路を、ゲオルグ・ロイターは走っていた。
「ふぅ……ふぅ……はぁ……。くぅ……老体に……全力ダッシュは堪えるわい……」
　荒い息を吐きながら、ゲオルグはようやく隠し通路の出口に差し掛かる。
　だが、
「やあ、遅かったね」
「……なんじゃと！？」
　そこには、いるはずのない先客――サキリ・デイジーカッターがいた。
「馬鹿な……！？　何故、この場所が……！？」
　ゲオルグはきょろきょろとあたりを見まわす。そこは突入前に高杉かようが偵察していたブロックの色が違う城壁の北東部分だった。サキリは、色が違う城壁と、色が違う竜の逆鱗を見た瞬間から、逃げるならここが怪しいと踏んで、竜の撃破後、すぐに単独で先まわりをしておいたのだった。
「馬鹿はそちらの方じゃないかな？　いざとなったら逃げ道があるなんて甘い考えは僕達には通用しないよ」
　サキリはそう言って、隠し扉が設置された城壁の内側に手持ちの炸裂イモを投げて、その機構を破壊した。
「な……なんということを……」
「これで逃げ場はない。観念することだね。大人しく今後は二度とこんなことをしないと誓えばよし。さもなくば――」
「ひぃっ……！？」
　サキリが酷薄な笑みを浮かべると、ゲオルグは顔を青くして、元来た隠し通路を引き返そうとする。

「……悪いが、こちらも行き止まりだ」

「なっ……！？」
　だが、そこには隠し通路を発見して追ってきた八神修達が立ちふさがっていた。
「切り札と隠し通路を用意するまではよかったが、隠し場所が平凡過ぎたな。玉座の裏はあまりにも定番すぎる」
「くぅっ……」
　苦笑する修に、ゲオルグはようやく観念したように、その場で膝をついた。
「……わかった。女も、金品も全部返す。もう二度とこんなことはしない。だから、どうか命だけは……」
　ゲオルグが降参すると、冒険者達の間にわっと勝利の歓声が広がった。
「これにて一件落着だね！　じゃあ、皆でアストラルでお祝いしようよ！」
　アリス・ミーティアがそう提案すれば、早くも冒険者達は打ち上げムードになる。
「くく……。それならば、我々の里のカフェ＆バー『こびとのさかば』を使うがよい。こびとに伝わる秘伝の酒の味、とくと味わっていかれるがよいわ。ふはは……」
　先程目を覚ましたものの、まだどこかふらついている様子のリヒトは相も変わらず厨二病全開で、それがまた一同をどっと笑わせる。
「そいつはいいな。最終決戦のときは、ゆっくり酒を飲む暇もなかったからな。早速行くとしようぜ。ちゃんと城の入口にいるお嬢ちゃん達を迎えに行ってからな」
　酒飲みのレグルス・シェルタンは、ぺろりと舌なめずりをしながら、一行に出発を促す。
「はい！　カフェもついてるなら、みんなでお茶会もできますね。私、こびとさん達とお茶会したいです☆」
　椿美咲紀は、すでに楽しいお茶会のことで頭がいっぱいのようだった。
　かくして、一行は、全員揃って、無事にこびとの里の戻るのだった。

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