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＜月華＞悲しきアイに終止符を
月光満ちるその祈りの中で、サキリは異変に気づいた。
「あれ？ ……どういう、こと？」
ぱきり、ぱきりと音を立て、サキリの腕の中で石の剣は姿を変化させる。石は剥がれ、中から月長石の柔らかな光が溢れる。そこに現れたのは、確かに月長石の刃を持つ剣だった。
やがて、月長石の剣は眩い光を放ち、その一帯を照らした。まるで、元の持ち主へと声をあげるかのように。
その光の先は、空の高い場所。見上げた夏夜は、この世界の薄皮一枚向こう側にいるだろう２人を想う。
（すこし待ってて、白虹……、愛憐……）
＊：＊：＊：＊
――？ ？ ？
それは、どろどろにとけあったなにかだった。
意識？ それとも……魂？
ともかく、なにもかもが１つになっていた。けれども、愛憐と白虹だけが、「個」を認識できる不思議な存在だった。
それが、月華世界に降臨すれば、美しき銀の龍となるだろう。
「帳も、浄化されたのね」
ゆっくりとため息をつきながら、彼女……愛憐は呟いた。
「もう、呪皇たる君以外は魔物だけだよ」
彼……白虹はそう言って、自分を放さない彼女へと言葉を続ける。
「君は、それでも、世界を闇で閉ざすつもりなのかい？ そうして、君は心が晴れるのか？」
「少なくとも、貴方の愛した世界を汚せる。私も愛した世界だけれども」
「……僕が、君の気持ちに気づかないままだったからかい？」
「だとしたら？ 子供っぽいかもしれないけれど、私は本気で貴方を愛していたのよ。だからこそ、貴方が別の女性と結ばれたのが、苦しかった」
「藍音、だったら僕一人でいいじゃないか」
「それはもう、出来ない相談よ。私はもう私一人じゃない」
――私は愛憐。『呪皇』愛憐。
結ばれず、放っておかれ、ないがしろにされた愛情を憐れ、慈しみ、復讐の刃を握らせる者。
天帝に、世界に、膨大な自己満足に捧げられし贄姫達の魂の揺り篭。
彼女たちの想い、私の想い、その全てを月華世界に還す者。
愛憐の中に、多くの娘達の意思が見える。それを覆うかのように彼女ののろいで死した者たちの意思も。白虹はそれらにとりこまれそうになりながらも、どうにか愛憐の心に触れたくて悩んでいた。
＊：＊：＊：＊
浄化を施された帳は、白鋼と星華に会い、静かに頭をたれた。そして、寝子島の住人達へと迷惑をかけたことを謝罪した。
そして、彼女は１つの事を早急にいわねばならない、と口を開いた。
「私が浄化された事で、恐らく龍はここに降臨するべく力を消費するでしょう。もしかしたら、白虹殿が愛憐様を説得しているかもしれません」
そこまで言うと、帳は僅かに息を飲み、一同に言う。
「ただ、愛憐様は……あの方は、今までに捧げられていた贄姫の魂の集合体でもあります。それが問題なのです」
帳がそう言った時、急に大気が震え始めた。
「な、何なのだ？ なんかいびきみたいな音が聞こえるのだ！」
真央が慌ててきょろきょろすると、傍らにいた陽太が「落ち着いて」と肩を叩く。だが、次の瞬間、彼女は、夏夜は、瓢は、刀は、急に『感情』が高ぶるのを押さえられなかった。幾つもの記憶が脳裏をよぎる。色々な種類の娘たちが、恋をあきらめ、または、想い人へ別れを告げ、振られ、だまされ、神殿へ送られる。
（これって……贄姫たちの……！）
夏夜は慌てて耳を塞いだ。出なければ、彼女達の苦しむ声が自分の胸をかきむしるからだ。刀はぐっ、と歯を食いしばり、なんとか堪えようとする。
（みんな、想いを堪えなければならなかった。そして、人々の祈りを背負って……）
（これは、確かにこうなっても仕方ないねぇ？）
瓢は強がってにやり、と笑おうとする。けれども、その感情の激流が頭をかき乱す。どうにか倒れないよう堪えるので一杯だ。
「そ、そんな！ もう、ここへ現ると言うの……？！」
帳の悲痛な声。そして、鈍い音を立てて空が割れ、歪から美しい銀色の龍が姿を現した。
「これは……呪皇龍愛憐……？」
紫の問いに、答える者はいない。しかし、サキリが持っていた『天に嘶く者』が反応し、眩い光を放つ。
「！ もしかして、白虹に共鳴しているのかな？」
サキリはとっさに天へと剣を掲げ、身構えた。
響き渡る声。
立ちすくむ者、その場に倒れる者、泣き出す者。
――世界に、闇を。
そして、本当の安寧を。――
呪皇龍愛憐が、降臨する。
しかし、彼らは恐れてはいなかった。彼女と向き合わなければ、月華世界にかかった呪いは解けない。その事を理解し、その上で、どうにかしたい、と強く思っていたのだから。
――負の感情に彩られた魂を、貴方がたは救えるかしら？
愛憐は笑う。できるはずがない、と。
けれども、その場にいる者たちは、誰一人頷く者はいなかった。
（終）
「あれ？ ……どういう、こと？」
ぱきり、ぱきりと音を立て、サキリの腕の中で石の剣は姿を変化させる。石は剥がれ、中から月長石の柔らかな光が溢れる。そこに現れたのは、確かに月長石の刃を持つ剣だった。
やがて、月長石の剣は眩い光を放ち、その一帯を照らした。まるで、元の持ち主へと声をあげるかのように。
その光の先は、空の高い場所。見上げた夏夜は、この世界の薄皮一枚向こう側にいるだろう２人を想う。
（すこし待ってて、白虹……、愛憐……）
＊：＊：＊：＊
――？ ？ ？
それは、どろどろにとけあったなにかだった。
意識？ それとも……魂？
ともかく、なにもかもが１つになっていた。けれども、愛憐と白虹だけが、「個」を認識できる不思議な存在だった。
それが、月華世界に降臨すれば、美しき銀の龍となるだろう。
「帳も、浄化されたのね」
ゆっくりとため息をつきながら、彼女……愛憐は呟いた。
「もう、呪皇たる君以外は魔物だけだよ」
彼……白虹はそう言って、自分を放さない彼女へと言葉を続ける。
「君は、それでも、世界を闇で閉ざすつもりなのかい？ そうして、君は心が晴れるのか？」
「少なくとも、貴方の愛した世界を汚せる。私も愛した世界だけれども」
「……僕が、君の気持ちに気づかないままだったからかい？」
「だとしたら？ 子供っぽいかもしれないけれど、私は本気で貴方を愛していたのよ。だからこそ、貴方が別の女性と結ばれたのが、苦しかった」
「藍音、だったら僕一人でいいじゃないか」
「それはもう、出来ない相談よ。私はもう私一人じゃない」
――私は愛憐。『呪皇』愛憐。
結ばれず、放っておかれ、ないがしろにされた愛情を憐れ、慈しみ、復讐の刃を握らせる者。
天帝に、世界に、膨大な自己満足に捧げられし贄姫達の魂の揺り篭。
彼女たちの想い、私の想い、その全てを月華世界に還す者。
愛憐の中に、多くの娘達の意思が見える。それを覆うかのように彼女ののろいで死した者たちの意思も。白虹はそれらにとりこまれそうになりながらも、どうにか愛憐の心に触れたくて悩んでいた。
＊：＊：＊：＊
浄化を施された帳は、白鋼と星華に会い、静かに頭をたれた。そして、寝子島の住人達へと迷惑をかけたことを謝罪した。
そして、彼女は１つの事を早急にいわねばならない、と口を開いた。
「私が浄化された事で、恐らく龍はここに降臨するべく力を消費するでしょう。もしかしたら、白虹殿が愛憐様を説得しているかもしれません」
そこまで言うと、帳は僅かに息を飲み、一同に言う。
「ただ、愛憐様は……あの方は、今までに捧げられていた贄姫の魂の集合体でもあります。それが問題なのです」
帳がそう言った時、急に大気が震え始めた。
「な、何なのだ？ なんかいびきみたいな音が聞こえるのだ！」
真央が慌ててきょろきょろすると、傍らにいた陽太が「落ち着いて」と肩を叩く。だが、次の瞬間、彼女は、夏夜は、瓢は、刀は、急に『感情』が高ぶるのを押さえられなかった。幾つもの記憶が脳裏をよぎる。色々な種類の娘たちが、恋をあきらめ、または、想い人へ別れを告げ、振られ、だまされ、神殿へ送られる。
（これって……贄姫たちの……！）
夏夜は慌てて耳を塞いだ。出なければ、彼女達の苦しむ声が自分の胸をかきむしるからだ。刀はぐっ、と歯を食いしばり、なんとか堪えようとする。
（みんな、想いを堪えなければならなかった。そして、人々の祈りを背負って……）
（これは、確かにこうなっても仕方ないねぇ？）
瓢は強がってにやり、と笑おうとする。けれども、その感情の激流が頭をかき乱す。どうにか倒れないよう堪えるので一杯だ。
「そ、そんな！ もう、ここへ現ると言うの……？！」
帳の悲痛な声。そして、鈍い音を立てて空が割れ、歪から美しい銀色の龍が姿を現した。
「これは……呪皇龍愛憐……？」
紫の問いに、答える者はいない。しかし、サキリが持っていた『天に嘶く者』が反応し、眩い光を放つ。
「！ もしかして、白虹に共鳴しているのかな？」
サキリはとっさに天へと剣を掲げ、身構えた。
響き渡る声。
立ちすくむ者、その場に倒れる者、泣き出す者。
――世界に、闇を。
そして、本当の安寧を。――
呪皇龍愛憐が、降臨する。
しかし、彼らは恐れてはいなかった。彼女と向き合わなければ、月華世界にかかった呪いは解けない。その事を理解し、その上で、どうにかしたい、と強く思っていたのだから。
――負の感情に彩られた魂を、貴方がたは救えるかしら？
愛憐は笑う。できるはずがない、と。
けれども、その場にいる者たちは、誰一人頷く者はいなかった。
（終）
あとがき
担当マスター：
菊華 伴
ファンレターはマスターページから！
菊華です。
まずは、優木 遥斗さん、ガイドに出演してくださりありがとうございます。
次に参加してくださった皆さん、ありがとうございます。
結果はリアクションの通りです。
（リアクションに目を通していない方は、読んでから後書きをご覧ください）。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
――憎しみは、埋め火の如く燻り続けるものである。
シトラス・ガムダン
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
結果
・帳の浄化に成功した
・儀式を中断させた
・呪皇龍愛憐を遅らせた
３つの点から『成功』となりましたが、アクションにより呪皇龍愛憐が登場しました！！
といっても儀式中断後なのは皆様の行動の賜物です。
また、色々と考察していただけて心より感謝します。
アクションの中で「おっ？」という物があり一部は的中されている方も……！
それがどうなるかは最終決戦をお楽しみに。
さて。
この結果を踏まえて最終決戦に続きます！！
最終決戦はこのシナリオの１５分後という設定になっています。その為疲労などがあまり回復していない
状態ですががんばってくださいっ！
（他のシナリオには参加できますからご安心を）
ちなみにこのシナリオが失敗していた場合、次回シナリオにて「住人を寝子島か星幽塔に避難させる」という選択肢が
登場する予定でしたが、見事成功しましたので出現しません。
ただし最終決戦に敗北した場合は……わかりますよね？
兎も角、次回も月光満ちる世界でお待ちしております。
縁がありましたらよろしくお願いします。
菊華 伴
おまけ
個人コメントにて負傷度、消費アイテムなど書いております。
確認お願いします。
また、次のアイテムと称号を皆様に
称号：儀式阻止成功者
取得：果物３つ（祭壇にあったもので、新鮮です。食べても大丈夫）
まずは、優木 遥斗さん、ガイドに出演してくださりありがとうございます。
次に参加してくださった皆さん、ありがとうございます。
結果はリアクションの通りです。
（リアクションに目を通していない方は、読んでから後書きをご覧ください）。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
――憎しみは、埋め火の如く燻り続けるものである。
シトラス・ガムダン
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
結果
・帳の浄化に成功した
・儀式を中断させた
・呪皇龍愛憐を遅らせた
３つの点から『成功』となりましたが、アクションにより呪皇龍愛憐が登場しました！！
といっても儀式中断後なのは皆様の行動の賜物です。
また、色々と考察していただけて心より感謝します。
アクションの中で「おっ？」という物があり一部は的中されている方も……！
それがどうなるかは最終決戦をお楽しみに。
さて。
この結果を踏まえて最終決戦に続きます！！
最終決戦はこのシナリオの１５分後という設定になっています。その為疲労などがあまり回復していない
状態ですががんばってくださいっ！
（他のシナリオには参加できますからご安心を）
ちなみにこのシナリオが失敗していた場合、次回シナリオにて「住人を寝子島か星幽塔に避難させる」という選択肢が
登場する予定でしたが、見事成功しましたので出現しません。
ただし最終決戦に敗北した場合は……わかりますよね？
兎も角、次回も月光満ちる世界でお待ちしております。
縁がありましたらよろしくお願いします。
菊華 伴
おまけ
個人コメントにて負傷度、消費アイテムなど書いております。
確認お願いします。
また、次のアイテムと称号を皆様に
称号：儀式阻止成功者
取得：果物３つ（祭壇にあったもので、新鮮です。食べても大丈夫）
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2018年04月30日
- 参加申し込みの期限
-
- 2018年05月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2018年05月07日 11時00分
