H･A･G･E～スキンヘッドの逆襲～｜リアクション

H･A･G･E～スキンヘッドの逆襲～

「だぁれが目も開けられない程に眩しい禿げ頭じゃ、ボケェ！」

　街中で暴れるスキンヘッドの男たちが頭部を眩しくさせている時、夜光もまたその中に混じって頭部をいちだんと激しく輝かせていた、その様に小学生が囃し立てると、夜光は鬼神の如き怒りを見せる。

「いてこますぞ！！」

　すると、夜光の隣にいたスキンヘッド団員が小学生から髪の毛を奪った。小学生は自らの頭から消え去った頭髪に泣いた。その小学生と一緒に歩いていた生徒が、あまりの異様さに逃げ惑う。

「やばいよ、やばいよ！」
「そこの白い子も逃げてー！」

　その場に立っていた白い少女を避けて、小学生は走っていく。

「スキンヘッド団！」

　白い子、白い少女、もとい城ヶ崎梨々子は、暴れる禿頭の男を見て思わず零した。もとよりアルビノで日の光に弱い彼女にとって、髪の毛が無くなるというのは死活問題だ。

「私には天敵ですわね……」

　梨々子は物陰に隠れて、スキンヘッド団の視界から逃げる。スキンヘッド団員も夜光も梨々子には気付かないまま、彼らを嘲笑した男子小学生から髪の毛を奪い取っていた。

「とりあえずちょっと隠れたりしながら進みましょうか……」

　彼らに背を向けて駆けだした梨々子だったが、曲がり角で誰かとぶつかって尻餅をつく。

「ひゃうっ！？」
「あれー？」

　梨々子を見下ろすのは、すらりとしたポニーテールの少女だった。彼女はあの惨状とは無縁でいられたのか、暢気な調子で口を開く。

「あたし野阿胡桃。どしたの？」
「わ、私は城ヶ崎梨々子ですわ。実は……」

　梨々子が状況を説明すると、胡桃は瞳を光らせ、梨々子の走って来た方向へ歩を進めた。

「ふうん。なんか面白そーだし見に行ってみよー」
「大丈夫ですの？」
「大丈夫、大丈夫―」

　その背を見送りながら、梨々子は小さく呟く。

「気を付けてくださいませ」

　胡桃がシーサイドタウンの駅に着くと、そこにはスキンヘッド団が跋扈し、ハゲとフサフサの総入れ替えが行われていた。フサフサになったスキンヘッド団員もまた、他の団員から髪の毛を奪われている。さながらそこはハゲ地獄絵図。末法の世である。

「すっご、何あれ」

　胡桃はその様子を笑いながら見ていた。

「ハゲた人が別の人ハゲにしてハゲじゃなくなってる。マジやばくない？」

　胡桃の言葉に、その場のスキンヘッド団が彼女を睨んだ。そして、彼女の頭に伸ばされる手。

「イヤーッ！」
「ちょ、何よ！？」

　すると、彼女の頭からリボンが落ちる。スキンヘッド団が去った後、通行人がそのリボンを取って彼女に差し出した。その顔はどこか驚くような、哀しむような表情だ。

「落ちましたよ」
「ありがと……ん？」

　リボンを結ぼうと髪をかきあげようとした胡桃は、その手に纏わりつく何かがないことに気付く。何度手櫛を通そうとしても手ごたえがなく、それでも頭からは手が触れている感覚はする。まさかと思い、胡桃は手鏡を取り出した。

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