特異点Ｎ？　渾沌祖霊島寝子島｜リアクション

特異点Ｎ？　渾沌祖霊島寝子島

◆第二節交戦と合流と

　一行の後ろを、ドラゴンの群れが追っていた。方向は鋭く耳をつんざいて、彼らの羽の起こす鎌鼬が彼らの横をびゅうびゅうと過ぎて行った。無残にも生い茂る草木は刈りとられ、地に堕ちていく。優は叫ぶ。
「何だこりゃ！？」
「敵の戦力を見誤った。俺の落ち度だ、すまん」
　修の銃弾が何度も跳ね、ドラゴンを打ち落とすが追いつかない。カノンの必死の援護も限界がきそうだった。
「ぐっ……！」
　さらにドラゴンの後ろ、死臭を纏った動物たちが走ってくる。
「ドラゴンの次はゾンビか！？」
「キリがない……！」
　美咲紀は今弾を切らしたばかりのマスケットを投げ飛ばす修に叫ぶ。
「シュー君、何か良い策ないです！？」
「少し待ってろ……っと！」
　切迫した状況の中で一人、陰陽師風の男だけが軽薄な調子を崩さずにいた。美咲紀は呆れた様子でそれを見る。
「いやあ、潰しても潰しても出てくるね！　これはまいったな！」
「神霊さんも戦ってくださーい！」
「僕、戦闘能力はないからなぁ。ごめんね！」
　その状況で突如、矢と槍が遥か上空から突き刺さる。それは一行を避け、ドラゴンの群れの中に降ってきた。その後を追うように、何者かが駆ける。
「よっと！」
　それは少女の姿だった。陽光にきらめく黒髪を靡かせながら、少女は先程刺したばかりの槍を鮮やかな身のこなしで抜き取って、構える。
「伏せろ！」
　続いて、後方からの声。一行がそれに従うと、幾本もの矢がその上を通り抜けて、動物たちを屠った。その隙間を縫って、少女は槍を深々とドラゴンの懐に突き刺す。矢が止んだ後には、魔物の死体が転がっていた。
「助かった……」
「……君たちは誰だい？」
　優とカノンの瞳が二人を捉える。少女が先に口を開いた。
「私は仙藤蒼。しがない傭兵よ」
「俺は花菱真紀。……こういうのは柄じゃないんだけどなぁ」
　フランクな二人に、修が突如銃口を突き付ける。二人は驚いて後ずさった。
「何だよ！？」
「やる気満々で何より！　でもどうして？」
「もしかしたら人類の敵かもしれないので！」
「信頼するのはお前たちの性質を見極めてからだ」
　敵対心を露わにする修と美咲紀の様子に、蒼は首を傾げる。
「まさか貴方たち、来たばっかり？」
　蒼と真紀はそのまま、これまでの経緯を語り始めた――

「で、私は来てすぐドラゴンに襲われてー」
「俺は撤退中ってトコ」
　説明を聞き終え、修は二人……とくに、女騎士と遭遇したという真紀に向かって、質問を投げかける。
「花菱は……その女騎士の軍門に下ろうとは考えなかったのか？」
　真紀は首を振って、答えた。
「俺は悪いコトはあんまりしたくないんで……面倒そうだし」
「そうか……」
　真紀は協力の意図を伝えるべく、あれこれと言葉を並べてから、
「まぁ、俺にできるのは魔術師さん達を守ったり、サポートってとこかな」
　と結んだ。蒼は笑顔のまま、
「私は楽しめたらなんでも！」
　と、けろりと言う。未だ疑いの眼を向ける修と美咲紀に、陰陽師風の男がけらけらと笑いかけた。
「いいんじゃない？　とにかく貴重な戦力だよ」
　それに修は銃を下ろして、手を伸ばす。
「……勘違いするな。まだ信頼したわけじゃない」

「それじゃ、よろしく」
「よろしくな」
　一行の前を、蒼と真紀が歩いた。

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