夢から出てきて！｜リアクション

夢から出てきて！

水守流は呆然として飲みかけのゆめめサイダーなる缶ジュースを地面に落とした。
　無言でスマホを取り出して、SNSアプリを開いた。
『ありのまま起こった事を呟くぜ……。俺が買ったジュースを飲んだら今朝、夢に見たものが現実になった。何を言ってるかわから以下略！』
「現実逃避してる場合じゃねぇ」
　流はスマホを握りしめて、目の前に出現した巨大な猫型モンスターを見上げた。それはハイレベルノートリアスにゃんこのキングておんもすという。夢の中で流が戦っていたモンスターだったのだ。
「リアルに動くのは俺の仕事じゃねえってか、丸腰とかふざけん、なっ、あうふっ！」
　流の横っ面に猫パンチがヒットしたのだ。
　地面に倒れ込んだ流だが、すぐに体を起こす。
「くそっ、もっふもふだったぜ」
「にゃあぁあ」
「結構可愛い声で鳴いたぁっ」
　振り上げた前足が流を襲うが、避けて逃げたした。
　このままじゃれつかれれば、全身を舐められ、唾液まみれになってしまう。
「くぅ、俺の体力じゃもたない。そ、そうだ。さっきのジュース！　もう一本飲めば、あの武器が！」
　通りかかった角を曲がると、キングておんもすも追いかけてきた。
途中、猫耳をつけた謎の自転車集団を追い抜いたが、二度見している暇はなかった。
「さっきの奴ら、襲わねえのかよ！　完全に俺が狙いかよっ」
　すでに流はへたり始めていた。
「はぁ、う、ひぃっ」
　意識が遠くなり始めた頃、前方に自販機が見えた。
「うっしゃあ」
　お金を入れて、適当にボタンを押すと、予想通りゆめめサイダーが出てきた。
「来い、ねこじゃらットンソード！」
　流の目の前に現れたのは剣の柄だった。それを握ると光の粒子が集約して、下から上へ刃の部分が形成されて行く。夢で見たねこじゃらットンソードは身の丈ほどもあったはずだ。きっと対抗できる。
　流は身構えた。しかし、ねこじゃらットンソード見ると、刃の部分が三分の一ほどしか形成されていなかった。まるで折れた剣のような状態である。
「なにぃっ！？」
　流は慌てて逃げるのを再開した。
「嘘だろ！？」
　
　数十分後。

「ふっ」
　流は倒れていた地面から体を起こした。辺りには夕日が射していた。
「全身舐められてて戦闘不能になったから解放されたぜ。帰って着替えなきゃな」

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