夜食の誘惑｜リアクション

夜食の誘惑

旅鴉月詠はアトリエ『魔女の座』で絵を描いている。
真剣に取り組んでいるようで、周りの様子など見えていない。
絵が完成すると、ようやく月詠は筆を置いた。気付けば深夜である。

「キリのいいとこまでとはいかず、完成まで作業してしまったよ。中途に残しておくのも気になって眠れなくなりそうだしね」

最低限の片づけをやりつつ、空腹を覚えた月詠は何か作ろうと考える。
一般的に、夜食は太るといわれている。
エネルギー消費の減少、代謝の抑制によって。

「まぁ太ることを気にする歳でも身体でもないわけだが」

では、夜食自体避けるべきだろうか。いや、ある。夜食によいものが。
低カロリーで、消化がよく、温かく、水分が多い食べ物。
月詠は食料庫のなかを確認する。

「使ったもの頼んだものを確認して届けてくれるうちのメイドには感謝しているよ」
「アトリエでの家事は一人でやることにしているが、買い物だけは任せている。納品仕分けは寮の仕事だしね」

メイドの仕事ぶりに感謝しつつ、必要な食材を準備する。
今回のメイン食材は鮭である。

まず鮭の切り身を塩焼きにする。そして身はほぐし、皮は炙る。
炊飯器にまだご飯があるので、それをやや大きな椀によそう。
その上に鮭の身を敷いて、カリカリにした皮を乗せる。
この時点ですでに香ばしい匂いが立ち込め、食欲を刺激する。
さらに刻み海苔、白ゴマ、あられを少々。
最後に熱い煎茶をかければ、鮭茶漬けの完成である。

この一品はお茶を出汁にしても美味しく食べることができる。
椀は大きめだが、ご飯の量を通常の茶碗一杯程度にすればカロリーは基準値。
さらさらと食べやすく、思わずかきこみたくなるところだが、
熱いお茶をかけたのでゆっくり食べざるを得ない。
これにより、自然と味わいながら少しずつ食べることができる。
またカリカリに炙った皮も美味で、食感にアクセントを与えている。

「お茶の種類を変えるとまた違う味になるのでお試しあれ」

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