夜食の誘惑｜リアクション

夜食の誘惑

寝子島総合病院・宿直室。
深倉理紗子は少し残っていた書類仕事を進めている。
ノートパソコンのキーを叩く音だけが１人きりの部屋に響いている。

今日は当直勤務の日。朝の７時から１日が始まった。
午前から午後３時にかけて外来診察、それ以降もカルテや紹介状を書き、内科全体のカンファレンスだの症例勉強会だので忙殺された。当直が明けたら帰宅どころか、そのまま翌日の日勤に突入する。これほど働きづめという言葉が似合う状況もなかなか無いだろう。

去年の秋は、そんな激務がたたり過労で倒れて１ヶ月の療養を余儀なくされた。
職場に復帰したら倒れる前と変わらぬ勤務状況で息つく暇もない。

そして今。急患が運ばれてくる気配はなく、患者の容体が悪化したとの報告も無い。
しかし眠ることが出来なかったので、こうして事務作業に勤しんでいる。

そうしていると、突然、空腹を覚えた。
理紗子が時計に目をやると、時刻は午前１時４０分過ぎ。

（そういえば最後に食べたのって、確か昨日のお昼に売店で買ったおにぎり２つだけ……）

少し物寂しさを覚えつつ、部屋に置かれている冷蔵庫を開けてみる。
ミネラルウォーターやお茶のペットボトル、レンジで温める中華丼のレトルト、真空パックのご飯。
理紗子はそれらの候補からお茶とレトルト、ご飯を取り出す。
レトルトとご飯の封を開け電子レンジで温めると、それを器に盛る。

理紗子は椅子に腰掛けて、さっそく食べ始める。
少し味が濃い目だけど、悪くない。
空腹も手伝ってあっという間に完食してしまった。

「ふぅ、空腹も満たせたし、なんとか乗り切れそうな気がする」

理紗子は器を片付けると、ふたたびパソコンへと向かった。

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