夜食の誘惑｜リアクション

夜食の誘惑

「……やってしまった」

谷咲桃笑は自室で深くため息をついた。現在時刻は０時過ぎ。
学校から猫鳴館に戻ってきて、ゴロゴロしていたらうっかり眠ってしまい、気付けばこんな時間。
本当なら食べていたはずの夕食を食べ損ねてしまい、体が空腹を主張している。

「今日の夕飯用の食材はちゃんと用意してあるんだよね。カロリー配分もきっちり加味して考えた、素敵和食ご飯。今からでもこれを使って、寮の台所で夕食を作ることができる」
「しかし、なんかもう夕食って時間じゃ無いよね！」

こんな時間に台所でガチャガチャやっていたら、他の部屋の先輩たちに迷惑がかかるかもしれない。
この寮に防音を期待するだけ無駄な気もするので尚の事。
それに、ちょっと食べ過ぎただけでも簡単に地球からかかる重力として体重計の表示に反映されるのに、この時間に食べたら間違いなく全部脂肪に変換される。

（ああっ、燃費が良すぎる自分の体が憎いー！！）

食べたい。しかし、食べると体重増加は必至。その葛藤に頭を抱える桃笑。
心頭滅却するためにダイエット用のストレッチをしようと思い立つ。
体を起こすと、できるだけ周りに音が響かないように注意しながらストレッチを行う。

（オンボロ寮め……）

寮の防音性の低さを嘆きつつ、首周りから肩、腰、ふくらはぎや足先など丁寧に伸ばしていく。
自然と体の力が抜けていき、気持ちが穏やかになっていく。
しかし運動したからか、先程よりも空腹が強く感じられる。

（もっとお腹すいた……やばい）

このままでは、お腹が空いて眠れない。再び訪れる葛藤。
仕方ないので、ワカメと豆腐の味噌汁だけ作って食べることにした。
これなら低カロリーだし、この時間でも体重計への影響は低いだろう。

「うう……お米さん食べたい……だめ、太る……」

自分の食欲を自制しながら、味噌汁を静かに食べる桃笑だった。

このページにイラストを設定する