にゃんこのがっこう、はじまるよ～！｜リアクション

にゃんこのがっこう、はじまるよ～！

　金の瞳を持つ黒猫ユキナ（壬生由貴奈）も、『ご飯にありつくためには』を実践するべく、街をとてとてと歩いておりました。
　今日はぽかぽか暖かくて良い天気です。彼女の美しい黒色の背中にもお日様が当たり、毛並みもきらきらと輝いています。ほんと、実習にはもってこいの日和……って、あれ？　いつの間にかユキナが道端でくるんと円くなって寝ていますよ。どうやら彼女にとっては実習日和というよりお昼寝日和のようです。

（実習はねー、するよぉ。多分ねぇ）
　くはぁと見事なあくびをすると、その可愛らしい口をむにむにとさせながらユキナは輝く瞳を細くします。確かに、こんなにぽかぽかしてたら眠くなっちゃいますよね、猫ですもの。
　お日様をいっぱい浴びてうとうとしていると、近くで人間の声が聞こえ、ユキナはピクリと耳を動かしました。
「おや、可愛い猫だねぇ」
　薄目を開けて見れば、白い三角巾をしたおばさんがユキナをにこにこと見つめていました。そういえば辺りにはなかなかいい匂いが漂っています。どうやらここはお総菜屋さんのようです。ユキナはよいしょと腰を上げると、うーんと盛大に伸びをしました。
「あれ、起こしちゃったかい？　ごめんね」
　口に手を当て言うおかみさんの前で、ユキナはぷるりと頭を振ると、にゃあと可愛く鳴きました。
　実習開始です。

　ユキナは講義通りにおかみさんの足にくっついてすりすりと体を擦りつけます。
『ねぇねぇかまってー』
　甘えた声でにゃーんと鳴けば、おかみさんは嬉しそうに抱っこしてくれました。そしてしゃがんだ膝の上で、ユキナをとっても上手に撫でてくれます。
（ごろごろにゃー……気持ちいい。でもご飯もらうなら、もっと甘えにゃいといけにゃいよぉ）
　ユキナはあざとくにゃーと鳴くと、おかみさんの頬に顔をすりすり。そして金色の瞳をうるうるさせながら訴えました。
『おなかへったー。ごはんちょーだーい』
　ここが決め時と、ユキナはおかみさんの目を一心に見つめごろごろにゃあにゃあと鳴き続けます。猫の言葉が分からないおかみさんでも、さすがに気付きました。
「ああ！　お腹が減ってるの？　煮干しがあるから持ってくるね。でも猫にはたくさんあげちゃいけないってお客さんに言われたのよね……」
　ぶつぶつ言いながらおかみさんはすぐ傍の店の中に入っていきます。いい匂いのするその店の前でユキナがおとなしく待っていると、おかみさんが嬉しそうに小皿を持って戻ってきました。
「鮭をほぐしたのがあったわ。お塩が入ってないやつだし、これなら猫ちゃんも大丈夫よね！」
　ユキナの前に置かれた皿の上には、色鮮やかな鮭のほぐし身。ユキナはペロリとそれを平らげると、お皿をたしたしと叩きながらにゃーとおかみさんに鳴きました。その可愛らしい仕草に、おかみさんの目尻は思い切り下がります。
「あら、おかわりなの？　待ってね、まだ奥にあるからね」
（……お皿叩きと甘え鳴きの合わせ技。これで人なんかいちころにゃー）
　いそいそと店に戻るおかみさんの背中を見ながら、ユキナはどやぁ……！　と鳴きました。

（まさか、おかわりまでゲットするとは。なかなか恐ろしい生徒だな）
　のんびりしてるような感じだけど。
　猫は見た目では分からないなと思いながら、にゃんこ学校の卒業生は、ユキナの評価票に『合格』のハンコを押しました。