【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！｜リアクション

【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！

「うわー先輩！　さっきはありがとうございました！　本当は男だったんです……ね？」
　玄関先で、保健室に案内してくれた新井晶にばったり出会った紗雪幽は、先ほどの非礼を詫びようとして……晶が、女性化していたときとあまり変わらないことに首を傾げる。さらさらの長い銀の髪も、かわいらしい顔立ちも、ほとんどさっきのまま。身長が20センチほど高くなり、胸のふくらみが平らになっているくらいで、女の子だと言われたら信じてしまいそうだ。
「そんなにびっくりした顔しないで。極普通の男の娘なだけですから」
「極普通……って、男の娘っての、マジだったんですか！」
「心は男の子ですよ？　若いうちにかわいいを堪能したいだけです」
　晶はふふっと笑って手を振った。
「じゃあまた、イケメン君」
　唖然としたままの幽を残し、晶は歩き出す。
　銀の髪が春風になびく。
　自然とくすくす笑いが漏れた。
　今日は女の子を満喫出来て楽しかった。

◇

　男に戻った卯木衛は、意気揚々と保健室に向かう。
「今度こそ勝負だ！」
　ちぢんでいたのは女の子になっていたから！　男に戻れば絶対に成長しているはず。
　そう信じて臨んだ身長測定の結果は……、
「……152.8！？　あと２mm何で頑張んなかったんだよ！」
　去年から、0.8mmの成長！　一日の中でもこのくらいの誤差は出そうだが、成長は成長。しかし、思っていたほどの成長ではない。
「四捨五入して153cmっつーことで、ダメか！？　くそー！　ちゃんと来いよ成長期！」
　がんばれ！　衛君の成長物語はこれからだ！

◇

　職員室の前では、元のたゆんな胸を取り戻した宮祀智瑜が、頬を赤らめながら、胸を両腕でぎゅーっと寄せて、桐島義弘先生に迫っている。
「本物ですよ。見ます？」
　桐島先生は左右を見回し声を潜める。
「ご、誤解されるだろう。な？　宮祀」
「でもおっぱい好きなんですよね？」
「だからな、宮祀。y=ax^2+bx+cだ！」
　教頭の津止先生が通りかかったので、唐突に二次関数を叫んで誤魔化す桐島先生であった。

◇

　元に戻った稲井いおねと多喜勇生は、また廊下でおしゃべりしている。
　話題はさっきの性転換のときのこと。
「元に戻っちゃいましたが、勇生君をお姫様だっこしてクルクル、とっても楽しかったのです」
「いおねちゃん、格好良かったなぁ。よし、まずは身体を鍛えるのから始めてみよっと」
　勇生は、いつか恋人をクルクルお姫様だっこできるよう、筋トレに励むことを決意する。
「うんうん。勇生くんも何か決心したようですし良かったのです、多分！」

◇

「ねえねえ、今日のお昼の放送、聞いた？」
「聞いた聞いた！　名前のところよく聞き取れなかったんだけど、すっごく可愛い声だったよね」
「放送部にあんな声の子いたっけ？」
　噂する女子たちの隣を、冬樹闇と夏神零が通り過ぎる。
「……すごい反響でござるな、闇」
　零は闇に目配せする。噂の可愛い声の子が、この闇だと知ったら彼女たちはどんな顔をするだろう。
　闇は闇で、女子の大変さを思い知った一日だった。
「大きいと……不便……足元も……見づらい」
「そうじゃな」
　零は、胸に巻いたさらしを解き、素肌に制服の姿に戻る。
「女の子の格好をするのと、本当に女の子になるのとでは大違いでござるよ」

◇

「いやぁ、えらい目にあったべさ」
　学校からの帰り道、澪乃澄佳は並び歩く六月一日宮檸檬を見上げる。
「あのスケッチ、欲しかったっすね。あの人たち、どこに行っちゃったんだろうな」
「いや、もう……檸檬くんてば……」
　今日の壁ドンの事を思いだしながら、澄佳は頬を染めた。
　檸檬ちゃんの綺麗な顔……スケッチはなくとも、心の中にはしっかり収められている。

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