脱ぐな！　風紀委員会との戦い｜リアクション

脱ぐな！　風紀委員会との戦い

　そのころ、修は体力の限界を迎えていた。
（ここまでか……）
　だが脱ぎたい欲望は、修に倒れることを許してくれない。
　フラフラになった修の目に、ゴシック系のドレスを着たツインテールの人影が映った。
（あれは幻覚？　彼女……なのか？　天使かな）
　ツインテールの彼女はなぜか金髪だが、着ているものが制服でなくゴシックドレスなのも、今の修には些末なことだった。
（修君……もういいのよ）
　頭の中で、そう言ってくれた彼女の声が優しくて。
（いいのか……もう俺は……）
　修は幻影の天使に微笑むと、自分の制服に目を移し、手で触れた。
　汗と埃にまみれたそれに意識を集中する。
　バーン！
　我慢に我慢を重ねた欲望は、ろっこん『分解』を一気に発動させた。

　たまたま近くにいた神速脱ぎの武道が、その瞬間を目撃した。
「エッ全部一気に？　……ウソ、俺より速くない？！」
　武道の声に気づいた修は頭の隅で思う。
（脱ぐ速さを競っているわけではないのに、対抗意識燃やされそうだな……）
　そのままゆっくりと修は我に返る。
　確かに彼女だと思ったツインテールは、ゴシックドレスを着たマネキンに変わっていた。
「……！」
　体力の限界はどこかへ吹っ飛び、修は散らばった布きれを抱え走りだす。
「もう少しゆっくりしていけばいいのに」
　スケッチの手を止めずに月詠がつぶやいた。
　
　幸い近くだった射撃部部室に飛び込む。
（何が起こったのか……）
　誰もいない部室で、修はジャージを羽織って頭を抱えた。
　ありのままに今おこった事を振り返る。
（恐ろしいものの片鱗を見た……黒歴史だｏｒｚ）

　それでも、あの時浮かんだ彼女の笑顔だけは忘れたくない気がする。
　どんな恥ずかしい失敗をしようと、あの笑顔があればきっと耐えられるのだろう。

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